キスまでの距離
そんなあたしに気にする風でもなく、シンさんは続ける。
「待って。今度の日曜日、俺もおまえも休みをとった。一緒に花火大会に行くから」
「は?」
あたしはドアを閉めようとしたまま、立ち止まってしまう。
花火大会?
「む、無理です!」
「無理も無理だから。もう決定済み」
私の反論に、にっこり笑顔で返したシンさんは内側からドアを閉めて、発進させてしまった。
あたしはただ成す術もなく、呆然と走り去る車のテールランプを見ていた。