キスまでの距離
「80年って……いくらなんでも、おばあちゃんになるまでには治るわよ」
「そんな風に逃げてるようでは治らないよ」
あたしは返す言葉が見つからなかった。
確かに、今のままでは一生男が怖いままかもしれない。
―――でも、
「あたしはとにかく多少は男と接するようになれればいいの。普通にまでならなくてもいいの。」
あたしはハルの真っすぐな瞳を見れなくて、顔を背けながら続けた。
「男はハルだけ居ればいい。後はいらないの。ハルさえ居れば、結婚も何もいらない」