キスまでの距離
「……嫌ッ!!」
何をされるか瞬間的に悟ったあたしは、渾身の力でハルを突き飛ばし、慌てて部屋から飛び出した。
ハルが何処かに体をぶつけたような鈍い音が聞こえたが、構っている暇などなかった。
怖い、怖い、怖い。
ただ、頭の中はその言葉がぐるぐると回っていた。
あたしは家で待ち受けるモノが何かさえ頭になくて、そのまま自分の部屋に直行した。
途中、母親が「どこ行ってたの?シンさんがずっと―――」と話しかけていたのも無視して、二階への階段を駆け上がり、部屋の扉を開けた。