キスまでの距離
「え、シンさん……?」
確か駐車場も海岸の側にあったはず。
なのに、今、車は海と平行に走っていて、少しずつ近づいたはずの海岸から遠ざかっていた。
「シンさん、どこに行くの?」
会場から離れるのは嬉しいことだが、どこに行くかわからないというのも不安になってくる。
「着くまでのお楽しみな」
「……わかった」
車の中では運転しているシンさんに抵抗するなんて、ほぼ不可能だ。
だから、あたしは渋々頷き、シンさんに任せることにした。