今日から悪魔を目指します!
「勝手な事言わないでよ、それって私になんのメリットがあるの!?」

第一、生命力を吸収されるなんて恐ろしいイメージしかない。
だが、コランは全く引かない。

「契約したら、なんでも願いを叶えてやる。それが悪魔のルールだ」

真菜は一瞬、何も言い返せなくなった。
願い事が叶うなんて、普通の人からすれば最高の条件なのだろう。
欲深い人間であれば、それで命を削ったとしても……。
もう一押しかと思ったのか、コランが言葉を続ける。

「この『黒い本』は、強い『生命力』と、もう1つ。強い『願い』を持つ人間の元へと導かれるんだ」

コランは、まるで導くように、誘うように……赤い瞳で真菜の姿を捉える。
耳に自然と入り込む口調は、悪魔の囁きなのだろうか。

「真菜には、あるんだろ?叶えたい『願い』が」

それでも真菜が惹かれたのは『条件』ではなく、コランの眼差しだった。
見透かされているのだ、真菜の本当の心を。
急に悪魔らしい表情を見せる、そのギャップも恐ろしい。

「オレは、どうしても人間界で暮らしたいんだ。お願いだ、オレの願いを叶えてくれ」

強引に迫ったかと思えば、今度はお願いされてしまった。
そんな真剣な眼差しで、お願いされたら……嫌だとは言えない。
コランの赤い瞳には、魔力が宿っているのだろうか?
それとも、お互いの気持ちが一致したから?

「どうしてコランくんは、そこまでして人間界で暮らしたいの?」
「一人前の悪魔になりたいのと……他にも色々」

悪魔は人間と契約し、その人間の願いを完璧に叶える事で一人前と認められる。
契約期間中は、人間界で暮らすのもルールなのだ。

「……分かったわ。契約してもいい」
「ありがとう、真菜!!」

真菜の同意を得て、コランは一瞬にして笑顔になった。
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