今日から悪魔を目指します!
真菜は、コランを見て思ったのだ。
何か深い事情があって、コランは懸命に人間界で生きようとしている。
それは、複雑な事情の中で生きてきた自分と同じ。
立派な人間になりたくて、ここで一人暮らしを始めた自分と。
だからこそ、身勝手で一方的な要求であっても無視はできない。
いや、出来る事なら応援したい。

「1つ確認ね?生命力を吸収されたら、どんな影響があるの?」
「特に影響はないぜ!だって真菜は『最強の人間』だからな!」

そうだった、私は人間界で一番、生命力が強いんだっけ……?
悪魔に生命力を吸収され続けようと、全く問題はないレベルらしい。

コランは『黒い本』を左手で持って開くと、真菜に向けて差し出した。
開かれたページは白紙だ。
その左側のページに、コランが右手を置いた。

「真菜も、もう片方のページに手を置いてくれ」

言われた通りに、真菜は空いてる右側のページに右手を置いた。
これは、印鑑代わりの手形みたいなものだろうか?

「よし。契約完了!!」
「え、もう?何も起きなかったけど?」

本が発光するとか、何か起きる事を想像していた真菜は、あっけなく感じた。
二人が本から手を離すと、白紙だった両ページに紋章のような印が浮かび上がっていた。
コランは満足そうな笑顔で本を閉じると、そのままポンッと音を立てて、本を魔法で消した。

「さて、約束だ。真菜の願いを叶えてやる。なんでも言ってくれ」

悪魔との契約の見返りとして、なんでも願いを叶えてくれる。
だが、真菜は見返りを求めて契約をした訳ではない。
コランの気持ちに共感しただけなのだ。
そんな真菜の『願い』と言えば、ただ1つ。
< 11 / 75 >

この作品をシェア

pagetop