今日から悪魔を目指します!
「私はただ、普通に楽しい学校生活が送れれば、それでいいの」

真菜の、その『願い事』は思い付きではなく、ずっと願ってきた事。
それを聞いたコランは拍子抜けしたのか、キョトンとしている。

「なんだ、それなら簡単だ。絶対に叶えてやるよ」
「でも私が行きたいのは、もっと普通の学校で……」
「『普通』って、なんだ?悪魔にとっては、あの学校は普通だぞ」

真菜は言葉に詰まった。
コランは無邪気に見えて、たまに深い発言をする。
それは筋が通っているような強い言葉の力で、反論できない。

「それに、普通じゃない方が楽しいじゃん?」

そ、そうかもしれない……。
真菜は、コランの言葉の魔力に、打ち負かされているような気がした。
楽しい学校生活を送れたかどうかは、すぐに結果が出るものではない。
それは、後で感じるものだから。

「真菜の願いを叶えてやる。だから楽しもうぜ!」
「……そうよね」
「真菜、これからもよろしくな!」
「うん。よろしくね、コランくん」

コランの明るいパワーに押し切られて、真菜は全てを受け入れる覚悟をした。
どうせ、あの学校を卒業しなければ、この先はないのだろう。
逃げられないのなら、楽しんで進んだ方がいい。
魔王の(しもべ)でもなんでも、なってやる。
正直、悪魔には、なりたくないが……。
立派な悪魔を目指して、卒業するしかない。
どうか、私とコランくんが、笑って卒業できますように……。
真菜は今、契約という絆で結ばれた悪魔のコランを見て、心からそう願った。

「そういえば、人間界で暮らすって、どこで暮らすの?」

そんな何気ない真菜の質問に、コランは当たり前のように答える。

「隣に決まってんじゃん」
「へ……?隣?なんの隣?」
「真菜の家の隣」

その日コランは、すでにマンションの真菜の部屋の、右隣の部屋に引っ越してきていたのだ。
コランは、契約者となった真菜の生命力を常に吸収しながら人間界で活動する。
当然、真菜から遠く離れる事ができない為だ。
まるで、こうなる事が分かっていたかのような段取りの早さ。
実は、全てが計画的だったのでは?
本当は恐ろしい悪魔と契約を交わしてしまったのではないかと、真菜は今さら不安を感じた。
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