今日から悪魔を目指します!
真菜はコランと一緒に玄関から外に出た。
外の景色は、すっかり夕焼け色に染まっている。
真菜が、自分の家の右隣の部屋のドアを見て確認する。

「あ、本当だ……昨日まで空き部屋だったのに」

次に、ドアの横に掲げられている表札が目に入った。
そういえば、コランくんの名字って何だろう?と、真菜は気になって見た。
そこには、堂々とした字体で『魔王』の文字が書かれていた。

「え…魔王?魔王って、コランくんの名字なの?」
「うん!!父ちゃんの称号そのままだ!カッコいいだろ!」
「父ちゃん?父ちゃんって、まさか……」

魔王と聞いて思い付くのは、あの人しかいない。
担任教師であり、我らが(しもべ)の主人である、魔王だ。

「うん!!オレの父ちゃん、魔王だぜ!!」

驚きよりも先に、やっぱり…と納得してしまう。
そう思ってしまうほどに、容姿がそっくりだ。
だがよく考えると、次々に疑問が思い浮かぶ。
コランの見た目は、真菜と同年代の15歳くらいだろう。

「ちょっと待って、魔王先生って20代くらいに見えるけど!?」
「父ちゃん、1万年以上は生きてると思うぜ」

そんな途方もない数字を言われても……。
なら、コランは本当は何歳なのだろうか?
悪魔に関しては、人間の常識で考えない方が良さそうだ。
それ以前に、担任の先生と生徒が親子ってアリなのだろうか。
どれだけ親バカな魔王なのだろうか。
コランが隣の部屋に引っ越してきたという事は、魔王も一緒に……。
真菜は急に落ち着かなくなってきた。

「魔王先生、家にいる?挨拶しないと…あ、貢ぎ物を用意しなきゃ」

すっかり(しもべ)らしい真菜の発想に、コランは笑った。

「オレは一人暮らしするんだ。真菜と同じだ!」
「あ、そ、そうなの……」

ちょっと安心したような、複雑な心境の真菜であった。






とりあえず、怒涛の登校初日はこれで終わった。
魔王の(しもべ)として、悪魔の契約者として、最強の人間として。
一気に肩書きが増えてしまった『普通の少女』、真菜。
悪魔の学校での日々は、まだ始まったばかり。
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