今日から悪魔を目指します!
4時間目が終わり、昼休みになった。
真菜はカバンから弁当を取り出して机の上に置くが、どうしようかと思った。
一人でお弁当を食べる……?
このクラスで、まだコラン以外とは誰とも話せていない。
自分以外が悪魔だと思うと、どう声をかけていいのかも分からない。
そんな戸惑いを見て察したのか、隣の席のコランが真菜に話しかけようとした、その時。
真菜が席を立った。

(あれ?あの子……気になる……)

真菜が見ているのは、教室の廊下側の一番後ろの席に座っている女子生徒。
悪魔の特徴として魔王も生徒もみんな褐色肌なのだが、彼女だけは白い肌。
寂しそうな雰囲気にも親近感を覚えた真菜は、その女子の席に歩み寄る。
だが、何と話しかければ良いのか分からない。

「え、えっと……こんにちは」

真菜が緊張気味に話しかけると、席に座ったままの女子はキョトンとして顏を上げた。
白い肌に、肩にかかるくらいの栗色の髪と同色の瞳。
見た目は普通の人間で、悪魔らしさは感じない。
むしろ『日本の和』さえ感じさせる、和服が似合いそうな清楚な雰囲気だ。

「こんにちは……真菜ちゃん。私はアイリって言うの」

気弱そうに微笑んで答えるアイリを見て、真菜は瞬時に思った。
可愛い、守ってあげたくなるタイプだと。

「アイリちゃん、良かったら一緒にお弁当食べよう?」
「え……うん、いいよ。ふふ、嬉しい……」

今度は嬉しそうに微笑んだ。感情が素直に表情に出ている。
笑顔の可愛い子だなと、真菜は思わず見とれる。
その時、教室に魔王が入ってきた。

(しもべ)ども、命令だ!!今日は全員、食堂で飯を食え!!いいな!!」

教室中に響き渡るような大声で告げると、魔王は教室を後にする。
ハっとして、真菜はアイリを見る。

「え?食堂って……ここ、学食があるの!?」
「うん、3階にあるの。行こう、真菜ちゃん」

この教室は1階で、職員室は2階。食堂は3階にあるらしい。
そもそも、この学校には学年というものがなく、クラスも1つしかない。
この学校の生徒は、この教室の20人のみ。
こんなにも大きな校舎なのに、なんとも贅沢だ。
魔王が直々に(しもべ)を育成する、少数精鋭のエリート学校なのだ。
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