今日から悪魔を目指します!
食堂は教室よりも広く、10人が座れる長テーブルが5つある。
その中の1つのテーブルの端に、真菜とアイリは並んで座った。
真菜は持参した弁当を、アイリは食堂のメニューを食べている。

「わぁ、アイリちゃんのそれ、おいしそう!」
「ふふ、真菜ちゃんも今度、食べてみて」
「え、でも……」
「ここは無料なの」
「えっ!?そうなの!?」

魔界のお金なんて持ってないので、太っ腹な待遇で嬉しい。
何よりも、悪魔の食べ物が人間と変わらない事に驚いた。
食堂のメニューを見ると、肉料理が山盛り……何の肉だろうか。
見事に肉づくしなので、悪魔は肉食なのだろうと思った。
これを毎日食べたら、自分も悪魔に近付くのだろうか……。

ふと、別のテーブルで男子生徒たちと食事をしているコランの姿が目に入った。
やはり、コランは明るくて人気者なのだろう。
王子様とは思えないほどの人懐っこさで、周りには自然と人が集まるようだ。

「アイリちゃんは、どうしてここに入学したの?やっぱり立派な悪魔を目指して?」
「う~ん……ちょっと違うかな……」

意外な返事に、真菜は驚いた。
ここに入学する生徒たちは皆、一人前の悪魔になって魔王に仕えるのが目標だと思っていた。
アイリは少し俯いて話を続ける。

「私には強い魔力があるから、立派な悪魔になれるって、親に言われて……」

真菜がアイリに共感する理由が分かった。境遇が似ているからだ。
真菜も『最強の生命力』を持ち、立派な悪魔を目指すという謎の無茶ぶりで、この学校に通っている。
違うのは、真菜の場合は両親の理解を得て、一人暮らしをさせてもらっている。
真菜の両親も、まさか悪魔の学校に通う事を望んだ訳ではないだろうが。

「アイリちゃんは、立派な悪魔にはなりたくないの?」
「うん……私、本当はね……立派な人間になりたいの」
「ん?」

どこかで聞いた台詞だ。それは、常日頃の真菜の台詞だ。
確かにアイリには共感するのだが、その台詞はおかしい。
人間が悪魔になれとか、悪魔が人間になりたいとか……。
種族とは、そう簡単に越えられる壁なのだろうか?

その時だった。
天井のスピーカーから突然、けたたましいサイレンの音が鳴った。


『警報!!警報!!校庭に、野生の魔獣が侵入!!』
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