今日から悪魔を目指します!
食堂にいた生徒たちが一斉に、窓の方へと駆け出していく。
突然の事に、真菜は混乱する。

「え!?な、なに!?魔獣って!?」

確かに、魔界には『野生の魔獣』が徘徊してるって、さっき『生物』の授業で言ってたけど……
この学校は、そんな危険な生物が簡単に侵入するような場所なのだろうか?
真菜とアイリも食事を中断して、食堂の窓から校庭の様子を見る。
すると校庭の真ん中に、見た事もない巨大な獣の姿が見える。
見た目は黒い犬なのだが、背中にコウモリのような黒い羽根がある。
3階の窓から見てはいるが、体長5メートルくらいはありそうだ。
窓の外を見てザワザワと騒ぐ生徒たちの背後に、いつの間にか魔王が立っていた。

「案ずるな、(しもべ)たちよ!!これは防災訓練だ!!」

え?防災訓練?魔獣は災害の類なのだろうか?
真菜は怪訝な顏をして魔王を見る。

「あの魔獣も訓練用に飼い馴らしたオレ様のペットだ!!」

言われてみれば、魔獣は校庭に佇んでいるだけで動かない。
しかし訓練だとしても、なんで昼休みに行うのだろうか。
まぁ、(しもべ)なので反論はしないでおこう。……誰もしてないし。

「さて、こういう時はどうやって対処するか……誰にやってもらうかなぁ?」

なんとなく、さっきから魔王は真菜に視線を向けている気がしてならない。
……このパターンは、嫌な予感がする。

「真菜、命令だ。お前が何とかしてみせろ」

来たっ!!ご指名!!……いや、ご命令!!
真菜は身構えるが、それは魔獣に対してではない。
魔王の無茶ぶりに対抗するための気合いを入れたのだ。

「……えっと、すみません。分からないので、お手本を見せて下さい」
「なんだ、最強の人間のくせに怖気付いたのか」

例え生命力が最強でも、不死身ではない。
無難に逃げたつもりだが、この敗北感は何だろうか。

「まぁいい。アイリ、手本を見せてやれ」

魔王は、今度は真菜の隣のアイリを指名してきた。
アイリは動じる事なく「はい」と小さな声で返事をした。

「えっ!?アイリちゃん、大丈夫!?」
「うん、頑張る……真菜ちゃん、見ててね」
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