今日から悪魔を目指します!
この教室に入った瞬間に、何かおかしいとは思った。

みんな同じ制服を着てはいるものの、髪の色がバラバラだ。
金だったり銀だったり紫だったり…染めている?
校則は大丈夫なのだろうか。

そして誰を見ても、肌の色は小麦色。いや、褐色肌だ。
まだ春なのに、こんなに日焼けしたのだろうか…?
真菜だけが色白の肌で、浮いてしまっている。

一人だけ、別の存在が紛れ込んでしまったかのような違和感。
その時、自称『魔王サマ』が、教室の中央あたりの席に座る真菜に目を合わせた。

「転入生・真菜!!命令だ、前へ出ろ!!」
「はっ、ひゃいっ!?」

真菜は突然の名指しに驚いた勢いで、ガタっと大きな音を立てて立ち上がった。
震える足を進めながら、真菜は教壇へと上がる。

側で見ると、魔王は褐色肌に紫の髪、そして赤い瞳。カラコンだろうか?
ワイシャツのボタンをいくつか外し、ネクタイを緩く巻いている。
年齢は20代前半くらいに見えるが、教師にしては不良っぽい。

「真菜は、このクラスで唯一の人間だ。テメエら、仲良くしてやれよ!!」

魔王は真菜の肩に手を置き、クラス全員に向かって言う。
唯一の人間って、どういう事だろう…?
真菜は疑問に思ったが、なんだか逆らわない方が良い気がした。

「真菜、自己紹介をしろ」
「えっ!?は、 春野(はるの) 真菜(まな)です、よろしくお願いします……」
「ついでだ、何か芸をしろ。得意魔法でもいいぞ」
「……使えません……」

魔王とか、魔法とか…どこまで、この設定に合わせたら良いのだろう?
早く誰か、冗談だと言ってほしい……。
20人くらいの生徒たちの前で、真菜は遠い目をして助けを求めた。

「そんなんじゃ、立派な悪魔になれねえぞ」

「……立派な人間になりたいです……」
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