今日から悪魔を目指します!
スーパーを出て、自宅マンションの前まで辿り着いた。
真菜は、コランが持つスーパーの買い物袋を見て心配になった。
大量の生肉……日持ちしないし、食べきれるのだろうか。

「そんなにお肉を買って、冷蔵庫に入り切るの?」
「ん~~?あっ!!そっか、冷蔵庫がいるな!!」

そのコランのとぼけた様子に、真菜は呆気にとられた。

「まさかコランくんち、冷蔵庫がないの!?」
「すっかり忘れてた!父ちゃんに買ってもらわなきゃな!」

真菜は、ハァ…と溜め息をついた。
初めての人間界での一人暮らしとは言え、能天気すぎないだろうか。

「じゃあ、とりあえず私の家の冷蔵庫に入れておくわよ」
「ありがとう、真菜!好きだ!」

なんか、サラッと告白された気もするけど、深い意味はないのだろう。
真菜はコランから買い物袋を預かると、二人はそれぞれのマンションの部屋へと帰宅した。
真菜は家に入ると制服姿のまま、まずは大量の生肉を冷蔵庫へと入れていく。
どう見ても一人では食べきれない量だ。
そもそもコランは、生肉を調理できるのだろうか?
まさか悪魔は生肉を食べるのでは…と思ったが、学校の食堂の肉は調理されていた。

(もう、仕方ないなぁ……)

真菜は部屋着に着替えると、両腕の袖をまくって気合いを入れた。
自然と、その口元は微笑んでいた。

夕方になると、来客を知らせるインターホンが鳴った。
夕飯時なので、預かった生肉をコランが受け取りに来たのだ。
真菜は玄関のドアを開けると、コランに笑顔を向けた。

「今、出来上がったところなの。どうぞ上がって」
「え?なにが出来たんだ?」

真菜はコランを家の中へと招き入れた。
玄関に入った途端に家中に漂う、食欲をそそる香りにコランの鼻が反応した。
リビングに行くと、テーブルの上いっぱいに出来立ての料理が並べてある。
生姜焼き、唐揚げ、肉巻きなど、全てが肉料理だ。

「すげえ!!これ、真菜が作ったのか!?」
「そうよ、思いつく限りの肉料理。料理は得意なんだから!」

一人では食べきれないのなら、二人で食べればいい。
大量の肉という食材を目の前にしたら、料理の腕が鳴って思わず作りたくなったのだ。
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