今日から悪魔を目指します!
なぜ、一番最後に呼ばれるんだろう……。
そんな大トリみたいに期待されても、盛大に恥をかくだけなのに……。
真菜は重い足取りで、教卓へと向かう。

「えっと、先生……私、魔力なんて……」
「大丈夫ですよ」

ディアは優しい笑顔を向けた。
……何が大丈夫なのだろうか。
出来なくても慰めてくれる、という事だろうか。
真菜は失敗を恐れているのではない。『出来ない』のだ。
魔力がないので、失敗という結果も起こらない。『何も起こらない』のだから。
それでも形が大事。やることに意義がある。やるだけは、やるけど……。
真菜は、ランプに両手をかざす。

「先生、やっぱり私……」
「意識を集中して下さい。小さな火を指先に集めるイメージで」

なんか、先生がそれらしい事を言ってるけど……。
うわぁ、間近で見ると、ディア先生って本当にイケメン……
そんな事を思っていると……

ボッ!!

なんと、ランプの芯に小さな火が灯った。
……成功である。

「えっ!?うそ……!!」
「はい、よく出来ましたね」

魔法が使えた…!?いやいや、そんな訳はない。
魔法が使えない真菜を見兼ねて、ディア先生が手助けしてくれたのかもしれない。
実感も手応えもないまま席に戻ると、隣のコランが笑顔で声をかけてきた。

「やっぱり真菜はすごいな!」

真菜は笑顔を返せない。
先日、『魔法が使えなくても、やればできるものよ』とコランには言ったものの。
魔力がなくても、魔法は使えてしまうものなのだろうか……?
真菜は、こうなるとは予測していなかったし半信半疑だ。

そんな疑問を残したまま、今日の魔法の授業は終わった。
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