今日から悪魔を目指します!
その日の夕方、コランはいつものように真菜の家を訪れた。
真菜に晩ご飯を作ってもらうためだ。

「これからお肉を焼くから、ちょっと待ってて」
「うん!じゃあオレ、宿題して待ってる」
「あ!後で分からない所、教えてね」
「いいぜー」

コランは、しっかり教科書とノートと筆箱を持参してきている。
最近は晩ご飯が出来上がる少し前に来て、居座るようになってしまった。
真菜はキッチンに行くと、冷蔵庫から生肉のパックを取り出す。
ふと、ガスコンロの火を見て、今日の『魔法の授業』を思い出した。

(あれって、本当に私が魔法を使ったのかなぁ……?)

真菜は、人差し指を立てて意識を集中してみる。
ディア先生に言われた通りに、火をイメージして指先に意識を集中させた。

ボッ!!

「きゃっ!?」

指先にライターのような小さな火が灯って、真菜は驚いて振り払った。

「真菜、どうかしたのか!?」

真菜の叫び声を聞いたコランが、キッチンを覗きにきた。

「う、うん、なんでもない、ちょっと手が滑っただけ、だから……!!」

そう言って、真菜は引きつった笑顔でごまかした。
コランがリビングへ戻ると、真菜は震えながら自分の指先を見つめる。

(私、やっぱり魔法が使える……!?どうして!?)

真菜は、最近の自分の生活を思い返してみる。
魔界の学校に通って、授業を受けて、食堂でお昼を食べて、コランと晩ご飯を食べて……
確かに、常に魔界と悪魔に接してはいる。
それだけ、なのに。
いや、それだけで……?

(もしかして私、本当に悪魔に近付いてきてるんじゃ……!?)

このまま行けば、本当に一人前の悪魔になってしまうのかもしれない。
そのうち、背中にコウモリのような羽根が生えたりして……?
そんな事を悶々と考えながら、なんとかお肉料理を作り上げる。
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