今日から悪魔を目指します!
「でも、魔力の強さだけで王を決めるものなの?」
「ダメなんだよ、完璧でなきゃ。完璧な魔力を持たない魔王なんて、ダメなんだ」

こんなに辛く苦しそうに言葉を吐くコランは初めて見た。
真菜は再び、今日の魔法の授業を思い出した。
アイリは、自分が持つ強大な魔力をコントロールできないだけ。
コランは違う。そもそも弱い魔力しか持たず、魔法自体が上手く使えないのだ。
悪魔として完璧ではないコランが、それでも立派な魔王を目指している。
真菜がコランを応援したくなる理由が、また1つ分かった。

「オレは立派な魔王を目指す。もしオレが魔王になったら、その時は真菜を……」

その時は?その時は私を……なんだろう?
コランの真剣な眼差し、その赤い瞳から目をそらさずに、続きを待つ。
すると、急にコランが明るく笑った。

「やっぱ、やめた!その時になったら言う!!」
「ええ~!!気になるじゃない、言ってよ!!」

何を言おうとしたのか、真菜は想像してドキドキした。
学校を卒業して、一人前の悪魔になって、いつか魔王になって……。
そんなコランの夢は応援したいと思う。
自分ができる応援は、契約者としてコランに生命力を提供し続ける事。
そして、真菜の願いでもある『楽しい学校生活を送る』事。
契約者の願いを叶える事が、一人前の悪魔になる条件なのだから。
だから……これからも一緒に楽しめたらいいな、と真菜は思う。




他人を優先する優しさと強さ、それが真菜の本質。
コランは、生命力よりも何よりも……真菜のそんな本質に惹かれたのだ。
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