今日から悪魔を目指します!
真菜が思わず、不安を口にする。

「そんな……スパイなんて、ありえるの?」
「どうだろう?王宮より学校の方が潜入しやすいだろうしね」
「え~!!レイトは本の読み過ぎなんだよ!父ちゃんの学校にスパイがいる訳ないじゃん!」
「うん。私も、パパはスパイなんて見逃さないと思う……」

スパイの話で盛り上がってしまったが、ここは魔王が設立した学校だ。
アイリの言う通り、入学時にスパイを見逃す事はありえない。

「でも、もし学校に死神がいたら、一番危険なのは真菜さんだよね」
「え、私……?」
「死神は人間の魂を狩るから、確実に狙われるよ」

確かに真菜は、この学校で唯一の人間。
そう言われてしまうと、逃げ道がなくて怖い。

「じゃあ、もしスパイがいたとして、オレとアイリは違うだろ?真菜は人間だし……」
「王子……何が言いたいのかな?」
「レイトが一番怪しいじゃん!!」
「なんでそうなるんだよ!?」

その話を聞いたアイリが、隣の席のレイトから少し離れた。

「レイトくん、スパイなの?怖い……」
「王女まで!?ちがう!!違うから!!」

そんなこんなで騒いでいると、時刻はもう夕方6時を過ぎていた。
真菜は図書室の壁掛け時計を見て、その時間に驚いた。

「あっ!!もう夕飯の時間だし、帰らないと!!」

そう。真菜は帰って、コランと二人分の晩ご飯を作らなくてはならない。
各自が机の上を片付け始めた、その時。
大きな足音を立てて、堂々と魔王が図書室に入ってきた。

「今日も遅くまで勉学に励んでいる、(しもべ)たちよ!!」

放課後とはいえ、図書室で大声を張り上げる魔王。これでも教師だ。

「ご苦労だったな、褒美をやろう。今夜は特別に食堂で飯を食えるぞ!!」

なんと魔王が、夕食を食堂で食べられるように手配してくれたのだ。
これには4人とも大喜びだ。

「ありがと~父ちゃん!!」
「魔王サマ、お心遣い感謝します」
「魔王先生、ありがとうございます!」

するとアイリが魔王の前に歩み寄って、その胸に抱きついた。
そして愛らしい上目遣いで微笑んだ。

「パパ、ありがとう。……好き」

アイリは、どれだけ甘え上手なのだろうか。
見ている真菜の方がキュンとしてしまう。

「クク……可愛いな、オレ様のアイリは」

そして、魔王も娘にメロメロなのであった。
見た目は20代の大人と、15歳の少女。なんとも奇妙な親子だ。
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