今日から悪魔を目指します!
テーブルに座っていた魔王が立ち、真菜たちの所へと行く。
アヤメの横に立つと、その肩を抱き寄せた。

「改めて紹介してやろう。オレ様の愛する妻、アヤメだ」

魔王の妻という事は、王妃だ。
まさか王妃が、食堂の調理を担当していたとは……。
真菜は思わず手を挙げる。

「はい!魔王先生、質問いいですか?」
「お、なんだ真菜。質疑応答か?いいぜ、許可する」
「アヤメさんは、おいくつなんでしょうか?」

そう。アヤメの見た目は、どう見ても高校生くらいなのだ。

「17だ。出会ったのは400年以上前の人間界だ」

(え?いやいや、おかしいでしょ、それ!!)

真菜は脳内でツッコむ。魔王の返答は何か色々とおかしい。
年齢の計算が合わないし、400年前って何時代の人……?

「まぁ、色々と禁断の魔法を使って、アヤメは永遠の17歳だ。分かったか」
「は、はぁ……分かりました」

よく分からないが、真菜は納得するしかなった。
しかし、アヤメは人間だ。
真菜は自分が学校で唯一の人間だと思っていたので、どこか安心する。
そう思ってアヤメを見つめていると、アヤメが笑顔で真菜の前まで歩いてきた。

「今度、真菜ちゃんの為に和食メニューも作るね」
「え!?嬉しいです、ありがとうございます!」

さすがに毎日、昼も夜も肉メニューだと、やはり和食が恋しくなる。
同じ人間、日本人どうしであるアヤメは心強い理解者だ。
するとアヤメは、真菜の顏に近付いて小声で話した。

「これからも、コランとアイリと仲良くしてあげてね」
「あ、……はい」

王妃にお願いされてしまっては、断れるはずもない。
見た目は若くても、子を見守る温かい眼差しには母親らしさを感じる。

アヤメと話し終えた真菜は、再びテーブルの席に戻る。

「驚いた…食堂の人が王妃様だなんて知らなかったわ。みんな知ってた?」
「あれ?真菜、知らなかったのか?お母さんは料理が得意なんだ」
「うん。お母さんの料理、大好き」
「王妃様の手料理を毎日食べられるなんて光栄だよね」

やはり、この学校を把握していないのは転入生の真菜だけのようだ。
それにしても……
魔王一家が勢揃いの、この学校の謎は深まるばかりだ。

「あ、もちろん真菜の料理も最高に美味いぜ!」

最後にコランが優しいフォローを入れてくれた。



何にしても今日は、テストに出そうな情報は色々と入手できたような気がした。
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