今日から悪魔を目指します!
「ねえ、この学校って、どうなってるの?魔王とか魔界とか何なの?」

真菜は、今までの疑問を一気にコランにぶつけた。
初めて言葉を交わしたクラスメイトだし、コランは人懐っこくて話しやすそうだ。

「うーん、そのまんまだな。魔王だし、魔界だし、オレは悪魔だし」
「……冗談でしょ?なんで皆、そんな変な事を言うの?」
「それよりも真菜、風邪引くぞ」
「え?」

言われて、真菜は今の自分の姿に気付いた。
大雨に打たれて髪も制服も、びしょ濡れだという事に。
気付いた途端に、寒くなってきた気もする。

「ほら、タオル。はやく拭け」
「あっ、ありがとう……って今、このタオル、どこから出したの!?」

コランの手元に、突然タオルが出現したようにしか見えない。
何もない所から一瞬で……マジックのように。

「あー、真菜は魔法を見た事ないのかー」

そう言って、コランはもう1枚、追加でタオルを出現させた。
コランは、本当に魔法を使っている――。

「オレ、悪魔だから羽根があるんだぜ、ホラ!!」

ポンッ!という軽い音と共に、コランの背中に黒い羽根が出現した。
真菜の驚いた顏が面白かったのか、コランは得意げに笑っている。
それはコウモリの羽根のようで艶があり、どう見ても作り物には見えない。
真菜が恐る恐る手で触れてみると、体温を感じる。

「どうだ?ここが魔界だって信じたか?」
「そうだとしたら、なんで私が、ここにいるのかサッパリなんだけど…」
「それは、真菜が『選ばれた最強の人間』だからだ!!」

そんな堂々と『選ばれし勇者』みたいに言われても困る。
真菜には最強になった覚えなどない。
何か事情があるにしても、事前に知らせてはくれないものか。
……知らされたとしても、拒否権はないのだろうが。

「真菜、魔界を見せてやるよ。行こうぜ!!」

コランは、今度は真菜の片手を握って手を繋いだ。
突然の事に抵抗もできず、真菜はその手に引っ張られて歩き出す。
コランが向かうのは、校門の外側。

「えっ!?校門の外は大雨よ、コランくんも濡れちゃうよ!?」
「オレと一緒なら大丈夫!!」

コランに手を繋がれたまま、真菜は校門の外へと歩を進めた。
雨に打たれるかと思って覚悟した、その瞬間。
校門を通り過ぎた、その瞬間に、眼前の景色が一変した。
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