今日から悪魔を目指します!
ディアが二人を背に乗せながらの空中戦は不利だ。
今は鳥獣の攻撃をかわすのが精一杯の状況。

「ごめん、真菜、ディア……何もできなくて」

コランが悔しそうに唇をかみしめた。
でも、その気持ちは真菜も同じ。

(私は……何もできないの!?)

魔法が使えなくても、なんとかなる方法。
無茶ぶりだって、無茶ではなくなる方法。
一人では無茶なら、二人で――

真菜はコランの背後から両腕を回して、ぎゅっと抱きついた。
突然の真菜の行動に驚いたコランが「へっ!?」と変な声を上げた。

「ま、真菜……!?」
「コランくん、私の力を使って!!私も念じるから!!」

真菜が魔法を使えるのなら、少しは魔力だってあるはず。
生命力を吸収するのと同じように、魔力も吸収して使ってほしい。
真菜は自分の中の力をコランに送るイメージで必死に念じる。

「うん、確かに力が湧いてきたぞ……!!」
「えっ!?本当に!?」
「もうちょい、もうちょっと強くだ、真菜……!!」
「これ以上、どうすればいいの!?」

コランは少しだけ真菜の方を振り返った。

「ほっぺにチューしてくれ」
「え!?こらっ!!調子に乗るなー!!」

どさくさに紛れてチューを求めてくるコランに真菜は叫び返した。
そんな、ふざけた事を言っている場合ではない。
今は上手いことディアが鳥獣の攻撃をかわしてくれているのだ。
それでもコランは必死で本気だった。

「頼む、ほっぺにチュー!!」
「分かった、分かったから!!後でね!!」

コランは再び片手を突き出して、鳥獣に向かって火の魔法を発動させる。

「やったぁー!!真菜とラブラブ・ファイヤーーーッ!!」

全力の叫びと同時に、コランの手の平から凄まじい炎が放たれた。
それは、アイリが放った炎の壁に負けないほどの業火だ。
しかし真菜は炎の事よりも、恥ずかしさのあまりに顏から火が出そうだ。

「なんなの、その掛け声!?やめて恥ずかしいー!!」

鳥獣はと言えば……炎に驚いて、遠い空の彼方へと逃げて行った。
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