今日から悪魔を目指します!
「あ、ディア先生。さっきは大丈夫でしたか?怪我してませんか?」
「大丈夫ですよ。コラン様も真菜さんも、よく頑張りましたね」

ディアは優しい笑顔を向けた。先生に褒められるのは、やはり嬉しい。

「でも、なんで野生の魔獣が襲ってきたんでしょうか?」

真菜の質問に、ディアは言葉を濁した。

「……たまたま、だと思いますよ」

しかしディアは、本当は気付いていた。
真菜の『最強の生命力』が、魔獣を引き寄せてしまった事に。
悪魔も魔獣も、人間の強い生命力に引き寄せられる。
コランが真菜に惹かれて、常に寄り添うのと同じように。

ディアと二人きりになったので、真菜は『あの不安』を打ち明けてみた。

「先生。私は人間なのに、なんで魔法が使えるんでしょうか?私、怖くて……」

するとディアは、それの回答ではなく、自分の過去話を始めた。

「私は少し前まで、自力で魔獣から人へと変身する事は出来ませんでした」
「そうなんですか?今は魔法の授業の先生なのに?」
「はい。自分は魔獣なのか人なのか、どちらを選んで生きるべきか、悩んだ時期もありました」

ディアは元々は、魔界の森に生息する凶暴な野生の魔獣だった。
それを魔王が魔法で人の姿に変えて、側近として育て上げた。

「でも魔王サマとアヤメ様が、どちらの姿の私も受け入れて下さったのです」
「魔王先生と王妃様が……」
「はい。そうしたら心が軽くなって、変身魔法が使えるようになりました」

どちらかの自分を選ぶ必要はない。両方が自分なのだと自信を持ったのだ。
ディアがなぜ今、この話を真菜にしたのか。
真菜にはまだ、その意味は受け取れていないが、感じた事がある。

……なんで、私は魔法を怖いと思ったのだろう?

真菜が考え込んでいると、ディアがログハウスに向かって歩き出した。

「行きましょう。コラン様もアイリ様も、中で待ってますよ」
「あ、……はい!」

真菜はディアの後を追って歩き出した。
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