今日から悪魔を目指します!
次の日、魔界の学校の校庭で体育祭は開催された。
集まったのは体操服の生徒20人と先生たち。
観客がいる訳でもないので、やはり単なる体育の授業に見える。
事前に何も知らされていないので、なんの競技が飛び出すか分からない。

「最初の競技は『玉入れ』だ!!」

魔王が宣言すると、校庭に玉入れのカゴが2つ置かれる。
真菜は、そのカゴを見て驚愕した。
そのカゴの高さは10メートルくらい。普通の玉入れのカゴの倍以上だ。

「ちょっ!!あのカゴの高さ!!高すぎない!?」
「そうか?あれが普通だぞ」

コランの反応からして、魔界ではそれが普通のようだ。
カゴの周りの地面には黒一色の玉が散らばっている。
赤でも白でもなく、黒い玉というのが魔界らしい。

「よーい、始めーー!!」

魔王の掛け声と同時に、生徒たちが一斉にカゴに向かって走り出す。
真菜も走って玉を拾うが、遥か上空にあるカゴを見上げて途方に暮れる。

「絶対に、あそこまで届かないよ……ねぇ、コランく…」

真菜が隣のコランを見ると、何やら玉を持って意識を集中させている。

「届け、オレのラブラブ・ファイヤーッ!!」

謎の掛け声と共に派手に腕を回転させて、玉を思いっきり上に投げた。
その玉はカゴよりも遥か上空まで届いて、そのままストンとカゴの中に落ちた。
掛け声はともかく、すごい力だ。

「すごい、コランくん!!」
「真菜も早く投げろ!!カゴに入った数が成績になるぞ!」
「ええっ!?そうなの!?」

なんと、競技は団体戦ではなく個人戦。そのまま成績に響くのだ。
コランと一緒に卒業を目指す真菜は、ここで成績を落とす訳にはいかない。
真菜は必死に玉を投げるが、届かずにカゴの半分くらいの高さで落ちてしまう。

「真菜、普通に投げたんじゃダメだ!!手に魔力を込めろ!!」
「え!?だって、魔法は使用禁止なんじゃ!?」
「使うのは魔法じゃない、魔力だ!!」
「もう意味分かんないー!!」

つまり、魔法で物を動かすのは禁止で、魔力で自分を強化するのはアリなんだろう。
真菜は玉を両手で包んで、魔力を込めるイメージで念じた。

「お願い届いて、ファイヤーーッ!!」

コランを真似て、つい真菜も恥ずかしい掛け声を上げて投げてしまった。
その玉は、コランが投げた時よりも高く上がり、見事にカゴの中に落ちた。

「真菜、すげぇな!!」

(うぅ……私、やっぱり魔力が、あるんだぁ……)

そうして真菜は、なんとかいくつかの玉をカゴに入れる事に成功したのであった。
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