今日から悪魔を目指します!
そんな真菜の心も知らず、次の競技は『借り物競走』。
魔界の学校にもあるの!?と真菜は驚くが、楽しそうではある。
しかも全員に、一斉に同じお題が与えられるという。
魔王が気合い充分で叫ぶ。

「お題は『好きな人』だ!!好きな人を連れてゴールまで行け!!」

生徒たちが、ざわつき始める。
これは競技というよりは、魔王のお遊びではないだろうか……。

「『好き』の種類は、なんでもいいぞ!!では始めーー!!」

次の瞬間、真菜は自分の隣に気配を感じた。
見なくても分かる。当然の事のように、常に隣にいるのだから。

「真菜ー!!さぁ、一緒に行こうぜ!」

満面の笑顔で、真菜の片腕を掴むコラン。
そんな当然の事のように言われても照れてしまう。

「え、なんで私!?」
「だってオレ、真菜が好きだから」

そして、そこまでストレートに言われたら恥ずかしい。
一緒にゴールまで行くのは、もっと恥ずかしい。

「……そこは王妃様でいいんじゃない!?」
「お母さんは、父ちゃんに取られた」
「え?」

真菜が遠くの魔王の方を見ると、王妃アヤメと手を繋いでゴールに向かっている。
というか、魔王が参加している時点で、やはりお遊びだ。

「じゃあ、アイリちゃんは?」

真菜が辺りを見回すと、校庭の隅に立つディア先生の姿を見付けた。
なぜか、ソワソワして落ち着かない様子だ。
そこへ、アイリが駆け寄ってきた。

「ディア、一緒にゴールまで行こう?」
「アイリ様……私でよろしいのですか?」
「うん。だって私、ディアが好き」
「アイリ様……」

普段は冷静沈着なディアが、あんなに嬉しそうに照れ笑いをしている。
そして手を繋いで、ゴールに向かって歩き出す。
なんだか将来は本当の意味でゴールインしてしまいそうな二人だ。

真菜はコランに視線を戻す。
コランは、真菜の返事を待っている。

「一緒に行こうか、コランくん」
「うん!!」

ゴールに向かう途中で、他の生徒たちの様子も見る。
『好き』の形はなんでも良いのだから、友達どうしでも良いのだ。
レイトは男友達と一緒にゴールに向かっている。
なんだか、自分達に向けられる視線が恥ずかしい……。
真菜は俯き加減でコランの横を歩いた。
そしてゴールに辿り着くと、そこで待っていた魔王がニヤニヤして二人を見る。

「やるな息子よ」
「うん!!オレたち、ラブラブだぜー!!」
「ちょっ!?やめてよー!!恥ずかしい!!」

(うぅ……やっぱり魔王先生、遊んでる……)
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