今日から悪魔を目指します!
コランの様子が変だと思ったレイトは、学校の方を向いた。

「ここで待ってて!僕、魔王サマに知らせてくるから!!」

しかし、コランがそれを制止した。

「待ってくれ……!!父ちゃんには、言わないでくれ!!」
「王子……?」
「ダメなんだ、こんな所で立ち止まっていたら、父ちゃんに……認めてもらえない!!」

コランが目指しているのは、マラソンのゴールより遥か先の未来。
一人前の悪魔になって、『魔王になる』という夢だ。
そんなコランの夢を側で見守ってきたアイリは、涙目で心配している。

「お兄ちゃん、無理しないで……無理しなくても、お兄ちゃんは魔王になれるよ」
「無理しなきゃ、なれないんだよ!!アイリと違うんだ!!」
「お兄ちゃん……」

アイリの目から、ポロポロと涙が落ちる。
生まれながらに完璧な魔力を持つアイリと、弱い魔力しか持たないコラン。
そんなコランの心に、アイリの声は届かない。

とりあえず木陰に移動して、コランを木の根元に座らせた。
少し落ち着いてきて、コランはアイリを見て申し訳なさそうに口を開く。

「アイリ……ごめんな」
「いいの……私、ずっと、お兄ちゃんを応援してるから……」

そんなアイリを見て、真菜は気付いた。
アイリが『人間になりたい』と言っていた、もう1つの理由が。
一人で何か考え事をしていたレイトが、ようやく口を開いた。

「変だよね、王子は常に真菜さんの生命力を吸収してるのに、こんなに疲れるなんて」

それを聞いた真菜が、レイトに問いかける。

「何が原因なのかな……?レイトくん、分かる?」
「簡易的に調べる道具なら持ってるよ」

そう言うと、レイトは体操服のズボンのポケットから、何かを取り出した。
それは、計測器が付いているリストバンド。
その道具の形を見た真菜は、それが何かに似ていると思った。

「それって血圧計?」
「そう。血圧だけじゃなくて、魔力、体力、生命力も測れるんだよ」
「レイト、お前、そんなの持ち歩いてるのか!?すげーな」
「万が一の時のためにね」

やはり今日が体育祭だから、だろう。
レイトは、どれだけ今日が不安だったのか……。
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