今日から悪魔を目指します!
レイトの思いがけない言葉に一瞬、誰もが黙り込む。
するとコランが、弱々しく笑い飛ばした。

「はは……なに言ってんだよ、真菜は人間だぞ。なぁ、真菜?」
「そうだよね、真菜ちゃん……?」

アイリも信じられないような顏で真菜の返事を待つ。
だが、真菜は俯いて何も答えない。言葉が出ないのだ。

……本当は、心のどこかで気付いていた。
最強の生命力を持っていて、魔界で普通に活動できて、魔法が使えて。
自分は人間で、将来は立派な人間になりたいと、ずっとそう願ってきた。
それなのに……

真菜は決意したように顏を上げる。

「みんな、黙っててごめんね」

これを言ってしまえば、もうみんなと一緒にいられないかもしれない。
それでも……。


「私のお父さんは、死神なの」


真菜の衝撃の告白に、その場が凍り付いた。
意を決して告白した真菜の瞳は、今にも泣き出しそうなほどに潤んでいる。
『死神』と言って思い出すのは、過去に魔王の宿敵であったという『最強の死神』。
レイトが、震える声で真菜に確認する。

「真菜さんが……死神のスパイ、だった……?」

ハっとして何かを言おうとした真菜より先に、コランが叫ぶ。

「やめろよ!!真菜はスパイなんかじゃない!!そうだよな、真菜!?」

しかしアイリもまた、震えながら真菜に問いかける。

「真菜ちゃん、スパイなの?……違うよね?」

3人に問い詰められる形になって、真菜は一歩後ずさった。
その瞳から涙が零れ落ちる。

「ちがう…私は人間と死神の子だけど、スパイじゃないの!!信じて……」

言いたい事が沢山あるのに、言葉にならない。
真菜はみんなを騙そうとしたのではない。自分は人間だと思い込んできたのだ。
死神の子でありながら死神の能力は全く受け継がずに、人間と変わらない。
だから、ずっと人間として生きようと決めた。
人間の学校に通って、立派な人間になるんだと。

……それなのに、『力』が目覚めてきてしまったのだ。

最強の生命力を持つのは、父親が『最強の死神』だから。
魔法が使えるのも、死神の子だから。

魔界の学校に通い始めて、『悪魔』に近付いてきたのではない。
『死神』の力に目覚め始めてきていたのだ。
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