今日から悪魔を目指します!

第9話『今日から魔界に…行けません?』

魔界の学校の校門前。
あれから、コラン、レイト、アイリの3人は、ここへ移動してきた。
おそらく人間界に行ったと思われる真菜を追いかけるためだ。
だが、校門の転移の魔法が発動しないのは、コランも同じだった。

「なんで人間界に行けないんだよ!?」

コランが何度も校門を出たり入ったりを繰り返してみたが、人間界に行けない。
真菜と同じように、校門にかけられた転移の魔法が発動しない。
レイトが冷静に状況を分析する。

「校門の転移魔法を管理しているのは……魔王サマだったよね」

それを聞いたアイリは不思議に思った。

「パパが転移魔法を停止させたの?なんで、こんな時に……」

「そうだ、オレ様だ」

その声に驚いてアイリが振り向くと、いつの間にか背後に魔王が立っていた。
魔王はそのまま、コランの前へと歩いて近付く。

「父ちゃん!なにすんだよ!人間界に行けないじゃないか!!」
「あぁ、行かせねぇ。人間と無契約のまま人間界に行ったら、どうなる?」

悪魔は、人間界では生命力を消耗する。
ただでさえ、真菜との契約を解除されて生命力を消耗しているのだ。
これ以上、人間界で活動すれば命に関わる。

「父ちゃんは真菜のこと、知ってたんだろ?なら、なんで……」

魔王が全てを知っていたのなら、こうなる事も分かっていたはず。
だが、魔王は首を横に振った。

「いや。真菜が『力』に目覚めなければ、そのまま人間として扱うつもりだった」
「どういう事だよ?」
「真菜をこの学校に入れた理由は、真菜の母親に頼まれたからだ」

魔王が、真菜を入学させるまでの経緯を説明した。
真菜の母親は人間。
そして魔王が昔、人間界の学校で教師として働いていた時の教え子だった。
その後、死神と結ばれて真菜を生んだ母親が、魔王を頼ってきたのだ。
真菜は死神の能力を受け継がずに、ほぼ人間として生まれた。
だが、いつ死神としての能力に目覚めるか分からない。
だから、普通の人間の学校に通わせる訳にはいかない。

……だから、同じ仲間のいる『魔界の学校』に通わせてほしい、と。

コランはアイリと目を合わせた。同じ事を思っているのだ。

「そうか……真菜はオレたちと同じ、『半分が人間』なんだ」
「真菜ちゃんも、私たちと同じ悩みを持っていたんだね」

死神だろうが、悪魔だろうが、目指すものが違おうが……
半分であっても『人間』の血を持つ、仲間なのだ。
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