今日から悪魔を目指します!
真菜が想いを込めて強く念じ、目を開ける。
すると真菜の足元が光り輝き、地面から広がるようにして景色が移り変わっていく。
まるで、校庭というキャンバスの真ん中に落とした一滴の絵の具が、その色を広げていくように。

夜雨から、星空へと。
人間界から、魔界へと。

気付くと真菜は、見慣れた魔界の学校の校庭に立っていた。

(行け……た……)

魔界の学校を人間界に転移させたのではない。
真菜自身が魔界に転移したのだ。
そして、いつの間にか真菜の目の前に、魔王が立っていた。
魔王は優しく微笑んでいる。

「魔王……先生……」
「よくやった、真菜。試験は合格だ」
「え……試験……?」

一瞬、何の事か分からずに、真菜は呆然としていた。
試験と言えば、思い付くのは1つ。

「卒業試験、ですか……?」
「いや、入学試験だ」
「え?」

真菜がまだ理解できずにいると、魔王の後ろから誰かが顏を出した。
それに気付いた真菜は、身を乗り出して叫ぶ。

「コランくんっ……!!」

叫ぶのと同時に駆け出し、コランの所へ行く。
すると、真菜はポロポロと涙をこぼした。

「もう、勝手にいなくならいで、よ……ばかぁ……!!」
「あ~うん、ごめんな……真菜、ビショビショじゃないか……」
「タオルくらい自分で出せるもん……魔法、使えるもん……」
「あぁ、そうだな」

コランは、雨に濡れたままの真菜を抱きしめた。

「ありがとう、真菜。オレを……魔界を選んでくれて」

中学を卒業した後の真菜が行くべき場所。
それは、真菜自身の選択に委ねられていた。
真菜が魔界に行く事を望み、自力で魔界に行く事。

それが、真菜が次に通う学校の『入学試験』だったのだ。

「真菜……好きだ。ずっと、大好きだ」
「……ありがとう。コランくん……大好きだよ」

「オレが魔王になったら、その時は真菜を……」

それは、さっきも聞いた同じ言葉。でも違ったのは……


「側近にして、それから……」


さっきとは違う、コランのその言葉の『続き』。
それを聞いた真菜は微笑んで、大きく頷いた。
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