娘の親友 〜友情とセックスと一途な思い〜
四 逢瀬
四 逢瀬
「ホントにどうしようもない、なんてダメなんだ・・・」
結局朝までにもう一回、朝起きてさらにもう一回明日香とセックスしてしまった瑛二。
いかに女性との性行為から遠ざかっていたとしても、欲情に流されて何度も明日香を抱いてしまったことでの自己嫌悪でいっぱいだった。
明日香が昼前に美和や夏菜子と一緒に買い物に出かけるということで帰ったあと、汚れたシーツを洗濯して、干してからぼーっと考え込んだまま、リビングのソファでそのままうたた寝してしまった。
・・・・・・・・・・・
「起きて!もう夕方だよ」と呼ぶ声に目を覚ます瑛二。
目の前には帰ってきた美和がいた。
「あ、お帰り。うたた寝しちゃった。いかん、洗濯物入れないと」
慌てて起きて洗濯物を取り込んで畳んでいると部屋で着替えてきた美和が声を掛けてきた。
「明日香から聞いたよ」
「えっ、あ、そうか‥‥‥」
「明日香、すっごく幸せそうだったよ。ありがとうね」
「いや、全然、ホントにダメだな、僕は‥‥‥」
「どうして?」
「だってまだ明日香ちゃん子供なのに、断らなきゃいけなかったのに‥‥‥」
「そんなこと言ったら明日香が可哀想。明日香のこと大事にしてあげてね」
「いや、でも、それは‥‥‥」
「私も素敵な彼氏、見つけなきゃ!」
「デパ地下でお惣菜買ってきたから、それで夕飯ね」
「あ、うん‥‥‥。明日香ちゃん、何か言ってた?」
「お父さんとちゃんとお付き合いできたらいいな〜って」
「えっ、そんなことも‥‥‥」
「まさかお父さん、明日香のことやり捨てとかしないよね!」
「いや、だって、やり捨てとかそんなことじゃないけど、でも付き合うなんてそんなの無理だよ」
「全然無理なことないじゃない。お互いが思い合っていれば」
「そうかもしれないけど、でもそう簡単にはいかないよ。自分の娘と同じ歳の子なんだよ」
「そう言って、静香おばさんが怖いんでしょう‥‥‥」
「いや、そういうことじゃなくって」
「まあ、明日香の気持ち、大事にしてあげてくれればいいから。お父さんだから、明日香を任せたんだからね。‥‥‥さっ、ご飯作ろうっと」
そう言ってエプロンをつけてキッチンで夕飯の支度を始める美和。
自分がいけなかったとは言え、引き返せない状況に陥ってきていることに頭を抱える瑛二だった。
その晩、明日香から電話が来る
「素敵な体験をありがとうございました」
「いえ、こちらこそ」
「なんか、お仕事モードみたいな言い方ですね」
「そうかな」
「来週の土曜日、予定空いてますか?」
「休みだけど」
「デートしませんか」
「えっ」
「金曜の夜からお泊まりでそのままデートでも大丈夫です」
「いや、それはダメだよ」
「お返事聞かせてもらいたいというのもあるので、すみませんが土曜日お時間ください。朝九時頃おうかがいしますね。楽しみにしてます」
なし崩しに押し切られてしまう瑛二。
だめだ、会ってちゃんとはっきり断らないと‥‥‥。
土曜日。
久しぶりに昨晩は遅くまで明日香にどう話すかを考えながら一人でワインを飲んでいて、飲みすぎてしまった瑛二が、はっと気がついて時計を見たら九時少し前だった。
いかん、明日香ちゃん、もう来ちゃう‥‥‥。
慌てて着替えてリビングダイニングに行くと元気な声がかかる。
見るとダイニングテーブルで、美和と明日香がコーヒーを飲みながら話してる。
「おはよう、お父さん」
「おはようございます。待ち切れなくて早く来ちゃいました」
笑顔のまぶしい明日香。
「あ、ごめん、寝坊しちゃって‥‥‥」
「いいな〜、週末デート」と美和が茶化す。
「楽しんできてね」
「うん、ありがとう」と嬉しそうな明日香。
「ごめん、すぐに支度するから、ちょっと待ってて」
瑛二が明日香に声をかける。
「ゆっくりでいいですよ。朝ごはん食べてからのお出かけで大丈夫です」
「お父さん、食べるでしょ」
席を立った美和がキッチンで瑛二の朝食の用意をはじめる。
「悪いね、簡単のでいいから」
美和に声をかけて瑛二は洗面所に向かう。
顔を洗っていると、明日香が入ってきた。
顔を拭いて明日香のほうを向く瑛二の唇に、明日香が唇を合わせる。
驚く瑛二を逃さないように抱きついて舌を入れてキスしてくる明日香。
「うぐっ、ぐっ・・」と抵抗虚しく、明日香の舌を向かい入れ、自分の舌もからめてしまう瑛二。
「朝のご挨拶です。表じゃできないので」
そう言ってにっこり笑う明日香の天使のような笑顔に思わずドキドキしてしまう瑛二。
いかん、こんなことじゃ、ちゃんと話できないぞ‥‥‥。
。「ちょ、ちょっと向こうで待ってて。すぐに支度するから」
「はいっ」と聞き訳よくダイニングに戻っていく明日香だった。
身支度を整えた瑛二がダイニングに戻ると、美和が作ってくれたフレンチトーストとサラダとコーヒーができあがっていた。
さっそく食べ始める瑛二に美和が話しかける。
「私も結構料理ちゃんとできるけど、明日香もすっごく料理上手なの。静香おばさん働いてるから、いつも明日香がご飯や二人分のお弁当も作ってるし」
「そうなんだ、偉いね」
「私、いつでもお嫁さんとしてやっていく自信があります」
瑛二をじっと見ながら言う明日香。
「でも、もしお父さんと明日香が一緒になったら、明日香、私の義理のお母さんってことになっちゃうんだよね」
瑛二は美和の言葉に思わず吹き出しそうになる。
「ホントだ。すごい変な感じになっちゃうね〜」と笑う明日香。
まさに針のむしろ、という感じで黙々と食べるしかない瑛二だった。
「いってらっしゃ〜い!」
美和に見送られて瑛二と明日香は出かける。
駅までの道を歩く二人。
週末なのでけっこう人通りがある。
「今日はどこに行くの?」
「ホントはおじさんとゆっくりとしたいので、ホテルでも行きたいんですが」
「えっ、それは、やっぱりマズいよ‥‥‥」
「そう言うと思ったので、映画見に行きましょう! デートです」
嬉しそうに微笑む明日香。
瑛二はホッと胸を撫で下ろす。
「手繋いだりしたいな」
瑛二の顔色を伺うように言う明日香。
「え、ちょっと、このへん知り合いとかに見られたりするし‥‥‥」
「私、平気ですけど」
「いや、そう言うけど」
「電車降りてからならいいですか?」
「まあ、それなら。でも恥ずかしいよ。明日香ちゃんみたいな美少女が、僕みたいなおじさんと手を繋ぐなんて、周りから変に思われるし‥‥‥」
「私、ぜんぜんかまわないですよ。手繋いで歩くのあこがれなので。あとそれから私のこと明日香って呼び捨てにしてくださいね。この前の夜みたいに‥‥‥」
「え、やっぱりそう呼ばないとダメ?」
「だめです。それくらいいいじゃないですか。美和のことも呼び捨ててることだし」
「わかったよ」
「私は『おじさん』って言うのはやめて『瑛二さん』でいいですか?」
「僕に拒否権はあるの?」
「ありません!」
そう言ってにっこり笑う明日香の眩しいくらいの若さに気後れするばかりの瑛二だった。
「映画も白かったですね!」
「そうだね、映画館で映画見るの、何年ぶりだろう‥‥‥。やっぱり映画はスクリーンで見るのがいいね」
「これからもいっぱい一緒に観ましょう!」
「え、あ、そ、そうだね‥‥‥」
瑛二は答えに困ってしどろもどろの返事になってしまう。
二人は映画館を出て、近くのカフェで休憩する。
週末なのでカフェは混んでいてほぼ満席状態。
「愛する二人が結ばれて、よかったです」
映画のエンディングの感想を楽しげに話す明日香。
「そうだね」
そう言いながらもやっと結ばれた主人公二人の濃厚なキスシーンに、明日香の気持ちが昂ってしまうのではないか、と瑛二は隣でドキドキしていた。
映画を見ている最中は、明日香がずっと手を握ってきて、ラストのキスシーンでは明日香の手が強く瑛二の手を握ってきて、明日香の興奮ぶりにちょっとヤバい感じを覚えたのだった。
「映画館、カップルだらけでしたね」
「そ、そうだね。濃厚なラブストーリーだったし」
「私たちもカップルですしね」と笑う明日香。
映画館に入る前も出てきたあとも、二人で手を繋いで歩いていると、周りの男性は超美少女の明日香に露骨な熱い視線を送り、次に手を繋いでいる瑛二に冷ややかな視線を投げてくるのが顕著で、瑛二は気が休まらない。
カフェでも遠巻きに明日香のことを見ている男たちが多いのだ。
「このあと、ちょっとお買い物で私、洋服を買いたいので、見立ててくれますか」
「えっ」
「それから夕飯を食べてから帰りましょう。美和が、瑛二さんの部屋にお泊まりしていけば、って言ってくれましたけど」
「えええっ」
流石に娘がいる家で、明日香とひとつベッドで一緒に寝るっていうのはどう考えてもまずいので、焦る瑛二。
「いや、それはダメだよ」
「母には今日も美和のところにお泊まりするって言ってきたので、今日は家には帰りません。瑛二さんと一緒に過ごしたいです。ダメですか?」
「私、瑛二さんに抱いてもらって気持ちよくなりたいです。瑛二さんも私と気持ちよくなりたくないですか?」
「いや、だからそれは‥‥‥」
「聞いてくれないか? 明日香とのことちゃんと考えたんだ。僕は明日香が美和と同じ娘のように大切だし、愛おしいし、大好きなんだよ。でも僕は明日香の保護者じゃなきゃいけないと思うんだ。静香ちゃんと一緒に、明日香の父親がわりになって明日香が成長していくのを見守ってあげないといけないと思うんだ。だから、男女の関係はもうやめないと。わかってくれるね‥‥‥」
瑛二の言葉にみるみる明日香の表情が翳り、目頭には涙が溢れてくる。
「どうしてダメなんですか、私、愛してるんです。瑛二さんの恋人になりたいのに‥‥‥うっ、うっ・・」
嗚咽を漏らして泣き出す明日香。
瑛二は慌てて明日香の肩に手を置いて慰めるようにしていく。
「明日香はほんとにいい子で美人だし、才能にも溢れているんだから、きっとこれから先、明日香が本気で好きになれる男性に出会えるから、こんなおじさんじゃなくって」
「私は瑛二さんが大好きなんです! 中学の時から今までに十人以上に告白されましたけど、全然ときめかないし、興味がわかないので、全部断ってきました。ずっとずっと瑛二さんが好きなんです。だから、そんな私の願い・・どうか叶えてください。私が嫌いだって言うなら諦めますけど、そうじゃないんなら‥‥‥」
そう言って泣き顔で瑛二のほうを見据えて唇を噛む明日香がいきなり大きな声で叫んだ。
「お願いです、私と結婚してください!!」
「ホントにどうしようもない、なんてダメなんだ・・・」
結局朝までにもう一回、朝起きてさらにもう一回明日香とセックスしてしまった瑛二。
いかに女性との性行為から遠ざかっていたとしても、欲情に流されて何度も明日香を抱いてしまったことでの自己嫌悪でいっぱいだった。
明日香が昼前に美和や夏菜子と一緒に買い物に出かけるということで帰ったあと、汚れたシーツを洗濯して、干してからぼーっと考え込んだまま、リビングのソファでそのままうたた寝してしまった。
・・・・・・・・・・・
「起きて!もう夕方だよ」と呼ぶ声に目を覚ます瑛二。
目の前には帰ってきた美和がいた。
「あ、お帰り。うたた寝しちゃった。いかん、洗濯物入れないと」
慌てて起きて洗濯物を取り込んで畳んでいると部屋で着替えてきた美和が声を掛けてきた。
「明日香から聞いたよ」
「えっ、あ、そうか‥‥‥」
「明日香、すっごく幸せそうだったよ。ありがとうね」
「いや、全然、ホントにダメだな、僕は‥‥‥」
「どうして?」
「だってまだ明日香ちゃん子供なのに、断らなきゃいけなかったのに‥‥‥」
「そんなこと言ったら明日香が可哀想。明日香のこと大事にしてあげてね」
「いや、でも、それは‥‥‥」
「私も素敵な彼氏、見つけなきゃ!」
「デパ地下でお惣菜買ってきたから、それで夕飯ね」
「あ、うん‥‥‥。明日香ちゃん、何か言ってた?」
「お父さんとちゃんとお付き合いできたらいいな〜って」
「えっ、そんなことも‥‥‥」
「まさかお父さん、明日香のことやり捨てとかしないよね!」
「いや、だって、やり捨てとかそんなことじゃないけど、でも付き合うなんてそんなの無理だよ」
「全然無理なことないじゃない。お互いが思い合っていれば」
「そうかもしれないけど、でもそう簡単にはいかないよ。自分の娘と同じ歳の子なんだよ」
「そう言って、静香おばさんが怖いんでしょう‥‥‥」
「いや、そういうことじゃなくって」
「まあ、明日香の気持ち、大事にしてあげてくれればいいから。お父さんだから、明日香を任せたんだからね。‥‥‥さっ、ご飯作ろうっと」
そう言ってエプロンをつけてキッチンで夕飯の支度を始める美和。
自分がいけなかったとは言え、引き返せない状況に陥ってきていることに頭を抱える瑛二だった。
その晩、明日香から電話が来る
「素敵な体験をありがとうございました」
「いえ、こちらこそ」
「なんか、お仕事モードみたいな言い方ですね」
「そうかな」
「来週の土曜日、予定空いてますか?」
「休みだけど」
「デートしませんか」
「えっ」
「金曜の夜からお泊まりでそのままデートでも大丈夫です」
「いや、それはダメだよ」
「お返事聞かせてもらいたいというのもあるので、すみませんが土曜日お時間ください。朝九時頃おうかがいしますね。楽しみにしてます」
なし崩しに押し切られてしまう瑛二。
だめだ、会ってちゃんとはっきり断らないと‥‥‥。
土曜日。
久しぶりに昨晩は遅くまで明日香にどう話すかを考えながら一人でワインを飲んでいて、飲みすぎてしまった瑛二が、はっと気がついて時計を見たら九時少し前だった。
いかん、明日香ちゃん、もう来ちゃう‥‥‥。
慌てて着替えてリビングダイニングに行くと元気な声がかかる。
見るとダイニングテーブルで、美和と明日香がコーヒーを飲みながら話してる。
「おはよう、お父さん」
「おはようございます。待ち切れなくて早く来ちゃいました」
笑顔のまぶしい明日香。
「あ、ごめん、寝坊しちゃって‥‥‥」
「いいな〜、週末デート」と美和が茶化す。
「楽しんできてね」
「うん、ありがとう」と嬉しそうな明日香。
「ごめん、すぐに支度するから、ちょっと待ってて」
瑛二が明日香に声をかける。
「ゆっくりでいいですよ。朝ごはん食べてからのお出かけで大丈夫です」
「お父さん、食べるでしょ」
席を立った美和がキッチンで瑛二の朝食の用意をはじめる。
「悪いね、簡単のでいいから」
美和に声をかけて瑛二は洗面所に向かう。
顔を洗っていると、明日香が入ってきた。
顔を拭いて明日香のほうを向く瑛二の唇に、明日香が唇を合わせる。
驚く瑛二を逃さないように抱きついて舌を入れてキスしてくる明日香。
「うぐっ、ぐっ・・」と抵抗虚しく、明日香の舌を向かい入れ、自分の舌もからめてしまう瑛二。
「朝のご挨拶です。表じゃできないので」
そう言ってにっこり笑う明日香の天使のような笑顔に思わずドキドキしてしまう瑛二。
いかん、こんなことじゃ、ちゃんと話できないぞ‥‥‥。
。「ちょ、ちょっと向こうで待ってて。すぐに支度するから」
「はいっ」と聞き訳よくダイニングに戻っていく明日香だった。
身支度を整えた瑛二がダイニングに戻ると、美和が作ってくれたフレンチトーストとサラダとコーヒーができあがっていた。
さっそく食べ始める瑛二に美和が話しかける。
「私も結構料理ちゃんとできるけど、明日香もすっごく料理上手なの。静香おばさん働いてるから、いつも明日香がご飯や二人分のお弁当も作ってるし」
「そうなんだ、偉いね」
「私、いつでもお嫁さんとしてやっていく自信があります」
瑛二をじっと見ながら言う明日香。
「でも、もしお父さんと明日香が一緒になったら、明日香、私の義理のお母さんってことになっちゃうんだよね」
瑛二は美和の言葉に思わず吹き出しそうになる。
「ホントだ。すごい変な感じになっちゃうね〜」と笑う明日香。
まさに針のむしろ、という感じで黙々と食べるしかない瑛二だった。
「いってらっしゃ〜い!」
美和に見送られて瑛二と明日香は出かける。
駅までの道を歩く二人。
週末なのでけっこう人通りがある。
「今日はどこに行くの?」
「ホントはおじさんとゆっくりとしたいので、ホテルでも行きたいんですが」
「えっ、それは、やっぱりマズいよ‥‥‥」
「そう言うと思ったので、映画見に行きましょう! デートです」
嬉しそうに微笑む明日香。
瑛二はホッと胸を撫で下ろす。
「手繋いだりしたいな」
瑛二の顔色を伺うように言う明日香。
「え、ちょっと、このへん知り合いとかに見られたりするし‥‥‥」
「私、平気ですけど」
「いや、そう言うけど」
「電車降りてからならいいですか?」
「まあ、それなら。でも恥ずかしいよ。明日香ちゃんみたいな美少女が、僕みたいなおじさんと手を繋ぐなんて、周りから変に思われるし‥‥‥」
「私、ぜんぜんかまわないですよ。手繋いで歩くのあこがれなので。あとそれから私のこと明日香って呼び捨てにしてくださいね。この前の夜みたいに‥‥‥」
「え、やっぱりそう呼ばないとダメ?」
「だめです。それくらいいいじゃないですか。美和のことも呼び捨ててることだし」
「わかったよ」
「私は『おじさん』って言うのはやめて『瑛二さん』でいいですか?」
「僕に拒否権はあるの?」
「ありません!」
そう言ってにっこり笑う明日香の眩しいくらいの若さに気後れするばかりの瑛二だった。
「映画も白かったですね!」
「そうだね、映画館で映画見るの、何年ぶりだろう‥‥‥。やっぱり映画はスクリーンで見るのがいいね」
「これからもいっぱい一緒に観ましょう!」
「え、あ、そ、そうだね‥‥‥」
瑛二は答えに困ってしどろもどろの返事になってしまう。
二人は映画館を出て、近くのカフェで休憩する。
週末なのでカフェは混んでいてほぼ満席状態。
「愛する二人が結ばれて、よかったです」
映画のエンディングの感想を楽しげに話す明日香。
「そうだね」
そう言いながらもやっと結ばれた主人公二人の濃厚なキスシーンに、明日香の気持ちが昂ってしまうのではないか、と瑛二は隣でドキドキしていた。
映画を見ている最中は、明日香がずっと手を握ってきて、ラストのキスシーンでは明日香の手が強く瑛二の手を握ってきて、明日香の興奮ぶりにちょっとヤバい感じを覚えたのだった。
「映画館、カップルだらけでしたね」
「そ、そうだね。濃厚なラブストーリーだったし」
「私たちもカップルですしね」と笑う明日香。
映画館に入る前も出てきたあとも、二人で手を繋いで歩いていると、周りの男性は超美少女の明日香に露骨な熱い視線を送り、次に手を繋いでいる瑛二に冷ややかな視線を投げてくるのが顕著で、瑛二は気が休まらない。
カフェでも遠巻きに明日香のことを見ている男たちが多いのだ。
「このあと、ちょっとお買い物で私、洋服を買いたいので、見立ててくれますか」
「えっ」
「それから夕飯を食べてから帰りましょう。美和が、瑛二さんの部屋にお泊まりしていけば、って言ってくれましたけど」
「えええっ」
流石に娘がいる家で、明日香とひとつベッドで一緒に寝るっていうのはどう考えてもまずいので、焦る瑛二。
「いや、それはダメだよ」
「母には今日も美和のところにお泊まりするって言ってきたので、今日は家には帰りません。瑛二さんと一緒に過ごしたいです。ダメですか?」
「私、瑛二さんに抱いてもらって気持ちよくなりたいです。瑛二さんも私と気持ちよくなりたくないですか?」
「いや、だからそれは‥‥‥」
「聞いてくれないか? 明日香とのことちゃんと考えたんだ。僕は明日香が美和と同じ娘のように大切だし、愛おしいし、大好きなんだよ。でも僕は明日香の保護者じゃなきゃいけないと思うんだ。静香ちゃんと一緒に、明日香の父親がわりになって明日香が成長していくのを見守ってあげないといけないと思うんだ。だから、男女の関係はもうやめないと。わかってくれるね‥‥‥」
瑛二の言葉にみるみる明日香の表情が翳り、目頭には涙が溢れてくる。
「どうしてダメなんですか、私、愛してるんです。瑛二さんの恋人になりたいのに‥‥‥うっ、うっ・・」
嗚咽を漏らして泣き出す明日香。
瑛二は慌てて明日香の肩に手を置いて慰めるようにしていく。
「明日香はほんとにいい子で美人だし、才能にも溢れているんだから、きっとこれから先、明日香が本気で好きになれる男性に出会えるから、こんなおじさんじゃなくって」
「私は瑛二さんが大好きなんです! 中学の時から今までに十人以上に告白されましたけど、全然ときめかないし、興味がわかないので、全部断ってきました。ずっとずっと瑛二さんが好きなんです。だから、そんな私の願い・・どうか叶えてください。私が嫌いだって言うなら諦めますけど、そうじゃないんなら‥‥‥」
そう言って泣き顔で瑛二のほうを見据えて唇を噛む明日香がいきなり大きな声で叫んだ。
「お願いです、私と結婚してください!!」