好きな人の妹とつき合う僕ってずるいですか?
3 迷い

3 迷い

「じゃ、邪念って……」

 京美先輩は自嘲するように視線を落として笑った。

「私ね、嫉妬してたの」

 嫉妬。

 これほど京美先輩に似合わない言葉はないだろう。

 される側ならわかる。

 特に同性から。

 しかし今の言い方は“、されて調子が出なかった”という意味じゃない。

 自分が誰かに嫉妬していたということだ。

「お姉ちゃん、どういうこと? そんなの昨日言ってなかったじゃない」

 苺梨が涙目のまま隣の京美先輩を見る。

 苺梨も初めて聞くことのようだ。

 京美先輩は微笑みながら苺梨を見た。

「その話をするために、苺梨についてきたんだよ」

 苺梨は呆然としている。

 本当は苺梨がボクに謝るのを見届けに来たんだと思っていた。

 妹思いの優しいお姉ちゃんだから。

 妹の想い人を欺してでも、つき合わせたいと思うくらいなんだから。

 初めはショックだった。

 まさか好きな人に自分の妹とつき合うように頼まれるとは。

 でも苺梨といっしょに過ごすうちに、これはこれでよかったのかもと思い始めていた。

 ボクと京美先輩が釣り合うわけない。

 女神のような京美先輩は、遠くから憧れて見つめるくらいでちょうどいい。

 その点、苺梨はいっしょにいて楽だ。

 素の自分でいられる。

 こんなボクでも、受け入れてくれる。

 好きだと言ってくれる。
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