好きな人の妹とつき合う僕ってずるいですか?
 だから今では京美先輩に感謝すらしていた。

 苺梨を紹介してくれてありがとうって。

 でも……

「舜右くん。あなたが好きなの」

 衝撃が全身を走り、持っていたハンバーガーがぽとりとトレイに落ちた。

 苺梨も口を両手で覆ったまま、京美先輩を見つめている。

「え、そ、それって…… ええっ!?」

 苺梨が立ち上がる。

 また店内の視線が集まるが、ボクもそれどころではない。

「ごめんね苺梨。あなたを紹介したのは私なのにね。でもあなたと舜右くんがつき合ってるのを見て、なぜかモヤモヤしてる自分に気づいたの。試合に集中できなかったのも、あなたたちのデートが気になってしょうがなかったから」

 ボクは息苦しくなって、呼吸を荒くした。

 それって…… それって……

 まだ現状を理解できない。

 いったい何が起こってるんだ?

 京美先輩はなにを言っているんだ?

「舜右くん、私はこれで部活は引退。大学ではテニスはやらないつもり。だからこれからは受験勉強に専念する。その前にちゃんと言っておきたかったの」
「そ、そんな…… お姉ちゃん…… ひどい」

 苺梨はよろめきながらテーブルを離れていく。

 そしてそのまま店を飛び出していってしまった。

「急にこんなこと言ってごめんね。別にあなたたちを引き裂こうってわけじゃないの。ただ知っておいてほしかったの」
「ボ、ボクは……」
「行って」
「え……」
「苺梨を追いかけて」
「は、はい」

 ボクは慌てて席を立ち、苺梨を追って店を出た。
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