好きな人の妹とつき合う僕ってずるいですか?
そんな京美先輩の好きな男のタイプが、どんなタイプなのかまったくわからない。

イケメンでもスポーツマンでも頭がいいわけでもないボクなんて、どうしたって京美先輩とつき合えるわけがない。

でもいわゆる、“将を射んと欲すれば、まずは馬を射よ”と言うではないか。

妹とつき合っているうちに、京美先輩とお近づきになれるかもしれないのだ。

「で、恵里菜ったらね――」

 苺梨は屈託なく笑い、いろいろな話をしてくれる。

 ボクは曖昧に笑って相づちを打つ。

 いつもの下校風景だ。そしていつもの分かれ道に着く。

「じゃあ、また明日」
「うん」

 手を振って走って行く苺梨の後ろ姿を見ながら、ボクは首をコキコキ回した。

 今日もお疲れ様、ボク。

 薄暗くなった道を、ボクは自宅へ向かって歩いて行った。

 遠くからボクを見つめる、苺梨の泣き笑いのような顔をには気づかないまま。



「ただいま」

 家に帰るとカレーのいい匂いがした。

 ボクは急に空腹を覚えて、急いで部屋に荷物を置いて着替えた。

 手洗いとうがいをしてリビングに入ると、すでに兄がテレビを観ていた。

「斗真兄(とうまあに)、もう帰ってたんだ」
「おう舜右、今帰りか」

 兄の斗真は今大学2年生だ。

 高校時代はサッカー部のエースで、大学もサッカーの強豪校へ推薦で進んだ。

 斗真兄もボクと同じ碧海学園出身で、斗真兄が3年の時京美先輩が入学した。

 当時は凄まじい衝撃だったという。
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