好きな人の妹とつき合う僕ってずるいですか?
 ボクはため息を吐いて振り返った。

「わかってるよ」
「わかってるならさっさと別れろ」

 父は母とは違う理由で苺梨のことが気に入らない。

 それは京美先輩の妹だからだ。

 兄は高校時代、京美先輩に3回告白して3回とも振られている。

 最後は大事な試合直前で、斗真兄のメンタルに大きく影響したと思い込んでいる。

 実際最後の試合の兄は、明らかに精彩を欠いていた。

 ストライカーとしての役割を果たせず、後半途中で替えられてしまったのだ。

 父はそれを京美先輩のせいだと思っている。

 斗真兄ほどの男を振ったことも気に入らないし、人気があることを鼻に掛けていると思っているのだ。

 ボクは部屋へ戻ってベッドに倒れ込んだ。

 腕で顔を覆ってボソリと呟く。

「わかってるよ」

 わかっていても、女の子を自分から振るだなんてできそうにもない。

 ボクの気の弱さは筋金入りだ。

 ボクが苺梨のあの明るい笑顔を泣き顔に変えるなんて、そんなとんでもないことできそうもない。

 でも、好きでもない子とズルズルつき合ってるのもよくない。

 好きな人の妹と下心でもってつき合うって、ボクはずるいヤツだ。
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