好きな人の妹とつき合う僕ってずるいですか?
「おいしいね」
「うん」

 無難なハンバーガーセットを注文し、園内を眺めながら二人で食べる。

 楽しげな音楽が、余計に違和感を生じさせた。

 ボクはどうしてこんなところにいるんだろう?

「センパイ」

 呼ばれてはっとした。

 苺梨といっしょにいるということを、一瞬忘れてしまっていた。

「お姉ちゃんのこと、気になるんでしょ」
「そ、そんなこと……」

 そんなことあった。

 でもそれを言うと苺梨を傷つける。

 そう思うと、それ以上何も言えなかった。

「大丈夫だって。お姉ちゃんはちゃんと優勝するって言ったでしょ」
「で、でも勝負に絶対はないし……」
「絶対。お姉ちゃんは絶対に勝つ」
「苺梨は、どうしてそんなに京美先輩のこと信じられるの?」
「フフッ」

 急に苺梨が笑い始めたので、ボクはきょとんとしてしまった。

「どうしたの? なんで笑うの?」
「ごめんなさい」

 苺梨は目を猫のように細めて、口元に手を当てた。

「ちゃんと名前を呼んでくれたの、初めてだなって」
「あ……」

 そういえばそうだ。

 苺梨のこと、いつもはちゃんと呼んでなかったかも。

「幸せだな」
「え?」
「ちゃんと名前を呼んでもらうだけで、こんなに幸せな気持ちになれるだなんて」
「そ、そう、ご、ごめん」

 そういうと苺梨は首を横に振った。

「ううん、センパイは謝らなくていいよ。無理矢理つき合ってもらっちゃってるのは、アタシのわがままなんだから」

 屈託なく笑う苺梨を見ていると、強烈な罪悪感が込み上げてきた。
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