悪魔の王女と、魔獣の側近 ~高校~
アイリとリィフを背に乗せたディアが飛行すること、約10分。
城下町の商店街の、リィフの自宅である店の近くの広場にディアは着地した。
ディアの背から降りたアイリは、目の前に堂々と建つ風格のある木造の店を見上げる。

「やっぱり、このお店だ。立派な店構えだよね」

リィフは店の前に立ち、堂々と腰に両手を当てて自慢げに笑う。

「せやろ?ご入用の際は、ぜひウチを利用したってな!お勉強するよ!」
「え?リィフちゃんの家で一緒に勉強するの?」
「あはは!アイリ様、おもろいなぁ!『お勉強する』は『お安くします』って意味やで!」
「そ、そうなんだ……」

一体どこの世界の方言なのか、アイリには意味が通じない言い回しが多くて戸惑う。
そんな、ちぐはぐな会話をする二人の後ろでは、人の姿のディアが優しい眼差しで見守っている。
店の外観を見ていたアイリは、次にショーウィンドウの中に並べて置かれている『石』に目を留めた。
形は整えてあるが光沢はなく、手のひらサイズの色とりどりの原石は神秘的な魅力がある。
呆然と石を眺めているアイリの横にリィフが立ち、解説を始める。

「そら『魔石』やで。磨いて加工したらアクセサリーにもなるんや」
「へぇ……原石なのに綺麗……」

この店は魔道具店なので、魔法に関するアイテムを取り揃えている。
魔石とは魔力を込める事ができる特殊な石で、宝石としてアクセサリーにも使われる。
他にも、魔力を込めると色が変わる布もあり、ドレスやスーツ等の衣類に使われる。
アイリは王女だがパーティー以外では着飾らないので、普段はアクセサリーを身に着けない。
初めての自分用アクセサリーは、好きな人からプレゼントされたいなぁ……と、振り返って後方のディアと目を合わせる。
ディアの口は微笑みながらも、少し眉を下げて困った顔をしている。
その反応に一瞬、アイリがショックを受けるが……

「アイリ様。お話中に申し訳ありませんが、もう日が暮れてしまいます」
「あっ!そうだよね、ごめん、ディア……!」

ディアの困り顔の意味が、帰宅時間が遅くなる事だと気付いたアイリは安堵すると同時に慌てた。

「じゃあ、リィフちゃん。私たちは、これで帰るね」
「アイリ様、ディア先生、今日はありがとうございました!ほな、さいなら!」

リィフは笑顔で片手を振ると身を翻し、店の裏口の方へと回って行った。
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