悪魔の王女と、魔獣の側近 ~高校~
リィフが店の奥へと消えていくのを見届けてから、ようやくアイリはディアと向かい合う。
……ディアはまだ、なぜか少し困った顔をしている。
アイリはディアがなぜ、さっきからそんな顔ばかりしているのか分からない。
「リィフちゃんって、魔法が不得意そうには見えなかったけど、これからも一緒に補習するの?」
「……いえ。リィフさんの補習は、今日だけです」
「え?どういう事?」
補習とは、留年しそうなほどに成績が危ぶまれる者が受ける特別授業。
それなのに、リィフだけが、たった一度の補習で終わり?
そこから導き出される真実とは……
ディアは、ため息をつくと、ようやく真実と心の内を明かした。
「リィフさんは、わざとです」
「え?わざとって……まさか!?」
アイリは、ようやく気付いた。リィフが、わざとテストで手を抜いて補習を受けたという事を。
魔法の授業を担当しているディアは当然、事前に見抜いている。
だが咎める事はなく、ディアも『わざと』一度だけは補習を受けさせてあげるのだ。
しかも、魔獣の姿の背に乗せて家まで送るというサービス付きで。
アイリは思わずディアの横にくっついて、彼の片腕を抱きしめた。
「ディア、優しいね……」
だからディアはこんなに人を惹きつけるんだと。それはアイリ自身にも言える。
「そうでしょうか。甘いだけかもしれません」
その甘さという優しさに、さらにアイリの愛しい感情は増すものの、切なさも増す。
やはり、リィフはディアの事が好きで近付きたいが為に、わざと補習を受けたのだろう。
だから、アイリに自分の恋を『応援してほしい』と言ってきたのだろう。
リィフだけではない。ディアに想いを寄せる女子生徒は多く、ディアは対応に慣れているのだ。
だが、深刻な問題はそこではなかった。
それは、『わざと』ではないのに、留年しそうなほどに危ぶまれる成績を取ってしまうアイリ。
ディアは、片手に抱きついているアイリの細い腕に、そっと手を添えて返す。
「魔法の不調は心理的な要因が多いですが、体調的な要因もありえます」
「そうかな?体調は特に悪くはないけど」
アイリは自分の腕に触れられたディアの手の温もりを感じながら首を傾げた。
どちらかといえば心理的な要因な気もするのだが、アイリはそれを言い出せない。
「念のため、医師の診断を受けた方がよろしいかと思います」
「……ディアが言うなら、そうする」
「承知致しました。では、医師を手配しておきます」
アイリの魔法が不調なのは、アイリの勉強が不真面目なのではなく、ディアの教え方が悪い訳でもない。
魔法の乱れは、心身の乱れでもあり、時には不治の病。補習でどうにかなるものではない。
だからこそディアは、不調の原因が病という可能性も捨てきれずに進言した。
それほどまでに、ディアはアイリを心配していた。
……それが、アイリの『恋の病』だとは知らずに。
……ディアはまだ、なぜか少し困った顔をしている。
アイリはディアがなぜ、さっきからそんな顔ばかりしているのか分からない。
「リィフちゃんって、魔法が不得意そうには見えなかったけど、これからも一緒に補習するの?」
「……いえ。リィフさんの補習は、今日だけです」
「え?どういう事?」
補習とは、留年しそうなほどに成績が危ぶまれる者が受ける特別授業。
それなのに、リィフだけが、たった一度の補習で終わり?
そこから導き出される真実とは……
ディアは、ため息をつくと、ようやく真実と心の内を明かした。
「リィフさんは、わざとです」
「え?わざとって……まさか!?」
アイリは、ようやく気付いた。リィフが、わざとテストで手を抜いて補習を受けたという事を。
魔法の授業を担当しているディアは当然、事前に見抜いている。
だが咎める事はなく、ディアも『わざと』一度だけは補習を受けさせてあげるのだ。
しかも、魔獣の姿の背に乗せて家まで送るというサービス付きで。
アイリは思わずディアの横にくっついて、彼の片腕を抱きしめた。
「ディア、優しいね……」
だからディアはこんなに人を惹きつけるんだと。それはアイリ自身にも言える。
「そうでしょうか。甘いだけかもしれません」
その甘さという優しさに、さらにアイリの愛しい感情は増すものの、切なさも増す。
やはり、リィフはディアの事が好きで近付きたいが為に、わざと補習を受けたのだろう。
だから、アイリに自分の恋を『応援してほしい』と言ってきたのだろう。
リィフだけではない。ディアに想いを寄せる女子生徒は多く、ディアは対応に慣れているのだ。
だが、深刻な問題はそこではなかった。
それは、『わざと』ではないのに、留年しそうなほどに危ぶまれる成績を取ってしまうアイリ。
ディアは、片手に抱きついているアイリの細い腕に、そっと手を添えて返す。
「魔法の不調は心理的な要因が多いですが、体調的な要因もありえます」
「そうかな?体調は特に悪くはないけど」
アイリは自分の腕に触れられたディアの手の温もりを感じながら首を傾げた。
どちらかといえば心理的な要因な気もするのだが、アイリはそれを言い出せない。
「念のため、医師の診断を受けた方がよろしいかと思います」
「……ディアが言うなら、そうする」
「承知致しました。では、医師を手配しておきます」
アイリの魔法が不調なのは、アイリの勉強が不真面目なのではなく、ディアの教え方が悪い訳でもない。
魔法の乱れは、心身の乱れでもあり、時には不治の病。補習でどうにかなるものではない。
だからこそディアは、不調の原因が病という可能性も捨てきれずに進言した。
それほどまでに、ディアはアイリを心配していた。
……それが、アイリの『恋の病』だとは知らずに。