悪魔の王女と、魔獣の側近 ~高校~
その時、いつの間にか背後から近寄ってきていた女子生徒が、リィフに話しかけた。

「あの……リィフ先輩、いいですか?」

小柄なポニーテールの少女はオドオドしていて、アイリ以上に気弱そうだ。

「ん?なんや?」
「私は、1年A組のカーナです。ディア様ファンクラブに入会したいのですが……」
「おぉ!もちろん大歓迎やで!ほな、カーナちゃんは会員番号536番やで!」
「ありがとうございます。会長、よろしくお願いします」

ディア本人が目の前にいるというのに、なぜか会長と会員で盛り上がっている。
しかしアイリは、その会員番号が特に気になった。

「そんなに会員がいるの!?ディア、大人気だね……」
「……恐縮です……」

もはやディアは遠い目をしている。
536人という事は、確実にこの学校の生徒数より上。
ディアファンクラブの会員数は学校という枠を越えて、魔界中に広がりつつあった。
ディアの写真集や、ディアの魔獣ぬいぐるみが城下町の店に並ぶ日も、そう遠くない。
リィフが起業する予定のファンクラブ運営会社も、大企業に発展する事は間違いない。




リィフの件も一件落着して、あとは卒業を迎えるのみ。
そして、アイリが高校を卒業する数日前の夜。
ディアはある決意を胸に、魔王の私室へと向かった。
こんな時間にディアが魔王の私室で二人きりになる事など、ほとんどない。
魔王はディアを部屋に入れると、ソファに背中を埋めて堂々と構えた。

「魔王サマ。申し上げたい事があります」
「なんだよ、改まって。さっさと言え」

ディアの態度と時期からして、アイリの事だろうと魔王はすでに見抜いている。
さすがの魔王でも、それを先に口にするような野暮な真似はしない。

「もうすぐ、私の『封印』の期限が切れます」

魔王が魔法によって封印した、ディアの恋愛感情。
その封印の効果は、アイリが高校を卒業するまで。
つまり、アイリが年齢的に大人になった時点で、ディアの恋愛感情は解放される。
その期限を設定して魔王に申し出たのも、ディアの意志によるものであった。

……アイリが大人になるまでは、自分を抑える。
……アイリが大人になった、その時は……

「その後は、アイリ様を私に下さい」

それが、ディアの決意。
魔王であり、アイリの父でもあるオランに、アイリとの結婚の許可をもらう事。
それも聞いても、魔王にとってはディアの心などお見通しなので、今さら驚く事でもない。
< 33 / 38 >

この作品をシェア

pagetop