悪魔の王女と、魔獣の側近 ~高校~
ディアは本来『魔王の側近』だが、魔王の命令により、この学校で教師としても働いている。
そして彼は魔王の城に住み込みなので、必然的にアイリとディアは一緒に城まで帰る。
昇降口を出た二人は、再び手を繋いで校庭を歩いて行く。
ちょうど校庭の真ん中あたりで、二人は歩みを止めて向かい合う。
少しアイリがディアと距離を取ると、ディアの全身が発光した。
そして、どんどん姿を変えて巨大化し、光が収まると、そこには巨大な魔犬が佇んでいた。
5メートルはあろう黒い犬で、背中にはコウモリのような羽根を生やしている。
これが、魔界最強の『魔獣』。ディアの本当の姿である。
そう……アイリが恋した相手は、教師であり、側近であり、『魔獣』なのだ。
身分差、年の差、種族の違い……
いくつもの禁断を重ねた、途方もないアイリの『片思い』なのであった。
アイリは慣れた様子で、魔獣のディアの背中に飛び乗る。
「ディア、いいよ」
背中から聞こえるアイリの言葉を合図に、ディアは羽根を羽ばたかせて上空へと舞い上がる。
魔獣の姿のディアは言葉を理解しているが、話すことはできない。
学校から王宮の城までは直線で、飛行すれば10分ほどで着く。
こうやってアイリは毎日、魔獣の姿のディアの背中に乗って登校・下校するのだ。
そんな魔獣の背中に乗りながら、アイリは未だ脳内で切ない恋の自問自答を繰り返す。
(ディア……私が高校を卒業すれば、恋人になってくれるの……?)
アイリが年齢的に大人になれば、ディアは愛の告白をしてくれるのだろうか。
……恋人だと、断言してくれるのだろうか。
それが叶わないのなら、ずっと高校生のままで、学校でディアと一緒に過ごしたい。
アイリは、ディアと変わらない関係のままで卒業することを無意識に恐れている。
卒業しても留年しても両思いになれないという不安が、アイリの中で葛藤を生む。
『生徒と教師』の関係であるアイリとディアは、城に帰れば『王女と側近』の関係になる。
その日の夜、アイリは父である魔王オランの私室へと入る。
とある『相談』をするためだ。
「ねぇ、パパ。ディアと恋人になるには、どうしたらいいの?」
父親に対してなんともストレートな質問だが、魔王はソファに背中を沈めてニヤニヤしている。
父とは言っても、見た目は20代。長寿の悪魔は実年齢と見た目が一致しない。
「簡単だぜ、アイリ。アイツは魔獣だ、調教すればいい」
「ちょう……きょう……?」
「命令だと言えばアイツは服従するだろ。それに今は春だ、チャンスじゃねぇか」
「え?春だとチャンスなの?なんで?」
アイリが不思議そうに聞き返すと、魔王は一言。
「獣だからだよ」
完璧な答えではあるが、純粋なアイリはそれの意味を理解していない。
魔王も王妃も普段は表立って口出しはしないが、アイリの恋を応援している。
それならば、なぜアイリは恋の相談を母親ではなく父親に持ちかけるのか?
それには、アイリの『片思い』以上に、切ない理由があった。
そして彼は魔王の城に住み込みなので、必然的にアイリとディアは一緒に城まで帰る。
昇降口を出た二人は、再び手を繋いで校庭を歩いて行く。
ちょうど校庭の真ん中あたりで、二人は歩みを止めて向かい合う。
少しアイリがディアと距離を取ると、ディアの全身が発光した。
そして、どんどん姿を変えて巨大化し、光が収まると、そこには巨大な魔犬が佇んでいた。
5メートルはあろう黒い犬で、背中にはコウモリのような羽根を生やしている。
これが、魔界最強の『魔獣』。ディアの本当の姿である。
そう……アイリが恋した相手は、教師であり、側近であり、『魔獣』なのだ。
身分差、年の差、種族の違い……
いくつもの禁断を重ねた、途方もないアイリの『片思い』なのであった。
アイリは慣れた様子で、魔獣のディアの背中に飛び乗る。
「ディア、いいよ」
背中から聞こえるアイリの言葉を合図に、ディアは羽根を羽ばたかせて上空へと舞い上がる。
魔獣の姿のディアは言葉を理解しているが、話すことはできない。
学校から王宮の城までは直線で、飛行すれば10分ほどで着く。
こうやってアイリは毎日、魔獣の姿のディアの背中に乗って登校・下校するのだ。
そんな魔獣の背中に乗りながら、アイリは未だ脳内で切ない恋の自問自答を繰り返す。
(ディア……私が高校を卒業すれば、恋人になってくれるの……?)
アイリが年齢的に大人になれば、ディアは愛の告白をしてくれるのだろうか。
……恋人だと、断言してくれるのだろうか。
それが叶わないのなら、ずっと高校生のままで、学校でディアと一緒に過ごしたい。
アイリは、ディアと変わらない関係のままで卒業することを無意識に恐れている。
卒業しても留年しても両思いになれないという不安が、アイリの中で葛藤を生む。
『生徒と教師』の関係であるアイリとディアは、城に帰れば『王女と側近』の関係になる。
その日の夜、アイリは父である魔王オランの私室へと入る。
とある『相談』をするためだ。
「ねぇ、パパ。ディアと恋人になるには、どうしたらいいの?」
父親に対してなんともストレートな質問だが、魔王はソファに背中を沈めてニヤニヤしている。
父とは言っても、見た目は20代。長寿の悪魔は実年齢と見た目が一致しない。
「簡単だぜ、アイリ。アイツは魔獣だ、調教すればいい」
「ちょう……きょう……?」
「命令だと言えばアイツは服従するだろ。それに今は春だ、チャンスじゃねぇか」
「え?春だとチャンスなの?なんで?」
アイリが不思議そうに聞き返すと、魔王は一言。
「獣だからだよ」
完璧な答えではあるが、純粋なアイリはそれの意味を理解していない。
魔王も王妃も普段は表立って口出しはしないが、アイリの恋を応援している。
それならば、なぜアイリは恋の相談を母親ではなく父親に持ちかけるのか?
それには、アイリの『片思い』以上に、切ない理由があった。