悪魔の王女と、魔獣の側近 ~高校~
突然のリィフの質問は、あまりにも単刀直入。
アイリが一番、返答に困る核心に迫り突き刺してくる、言葉の刃。

「……え、う、ううん……」

アイリの口から、この否定の一言を出させるというのは、どれだけ酷な事か。
こういう時、ディアとは恋人どうしなのだと断言できる仲だったら良いのに、と思う。
だがリィフはアイリを問い詰めたいのではなく、単にサバサバしているだけなのだ。
アイリの返事を聞いたリィフは、なぜかニーッと大げさに口角を上げて笑顔を作る。

「さよか。ほな、ウチのこと、応援してくれる?」
「え?応援……?」

応援とは、どういう意味なんだろう?
急に思考が回り出したアイリは、その言葉の意味とリィフの笑顔に不安を感じ始めた。
もしかして、リィフちゃんは、ディアのことが……?
……ありえる。優しくてイケメンなディアは当然、校内でもモテるからだ。
アイリがリィフの真意を聞き出すよりも先に、教卓側の引き戸が開いた。
入ってきたのは、今日も軍服スーツが素敵なイケメン魔法教師のディア。

「それでは補習を始めます。今日はアイリ様とリィフさんの二人ですね」

クールなディアは教壇に立つと、いつも通りに授業を開始する。
今日も先日に続き、『氷』の魔法の復習を行う。
だがアイリは、リィフの発言の事が気になって、常に上の空だった。
そのせいか、いつも以上に魔法の調子が悪い。
リィフは逆に、簡単に課題をクリアしてしまった。

「リィフさん、よく出来ましたね。その感覚を忘れないで下さい」

ディアがリィフに褒め言葉を言うと、アイリの胸は痛く苦しくなる。
どうしてこんな気持ちになるのか、アイリには分からない。

ビキッ!!パリン!!

アイリが両手で持つビーカーが音を立てて破裂してガラスが弾け飛んだ。
氷の魔法が失敗したのである。
その音に反応して、ディアが素早くアイリの机の前に立つ。

「アイリ様!?お怪我はありませんか!?」
「ディア……ごめんなさい」

アイリの手を取って心配してくるディアに、アイリは涙目で謝る。
……どうして、こんな簡単な魔法も出来なくなってしまったのだろう?
ディアも、リィフちゃんも。誰かが悪い訳ではない。
悪いのは、理由もなくモヤモヤと不快な気持ちに陥ってる自分なのだと、アイリは自分を責めた。
大好きだった補習の時間が、こんなに辛く感じるなんて……。

「アイリ様、どんまい!」

リィフは屈託のない笑顔でアイリを励ますが、それは逆効果。
アイリは作り笑いしか返せなかった。
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