悪魔の王女と、魔獣の側近
渦の中へと消えていくエメラの背中に続いて、アイリは恐る恐る足を踏み入れる。
その次の瞬間、アイリの視界に広がった光景は……
「え?ここって……城下町?」
賑わう繁華街と、道ゆく人々。その一本道の先には王宮の城も見える。
ここはアイリが先ほどまで歩いていた、魔界の城下町のようだ。
という事は、単にワープしたのだろうか。
「ここは魔界ではありません。『魔獣界』ですわ」
「え?でも……」
「よくご覧下さい」
アイリはもう一度、街の様子を眺める。
見慣れた街並みなのだが、よく見ると魔界の城下町とは雰囲気が違う事に気付いた。
建物の材質や装飾、店の並びも違うし、行き交う人々も悪魔ではないようだ。
するとエメラが説明を始めた。
「魔界の城下町を参考にして作った街なので、似ているのは当然ですわ」
「じゃあ、ここは異世界なの?」
「正確には、魔界の森の中にある『街』ですわね」
エメラが言うに、魔界の森の中に、魔獣だけが暮らす街を作ったのだという。
住民は全て『人の姿に変身した魔獣』、つまり希少種のみ。
この街は結界で守られ、外界からは存在が隠されていて、出入りできるのは魔獣のみ。
「城下町程度の小規模な街ですが、ここまで数百年かかりましたわ」
「エメラさんが一人で魔獣界を治めていたの?」
「この街を守る結界を維持できる魔獣は『バードッグ』しかいませんから」
現状、エメラが魔獣界の女王のような存在となって治めていると言える。
エメラは、城下町の街並みの先に見える城を指差した。
「あのお城には、まだ王が存在しません」
アイリには、エメラが何を言おうとしているのか分からない。
しかし突然、エメラが淡々とした口調に変わった事で、強い胸騒ぎを感じた。
「この世界には王が必要なのです。そして、王の力を継ぐ後継者も……」
アイリは胸元のペンダントを両手でぎゅっと握りしめて顔を伏せた。
エメラの、その先の言葉を聞くのが怖い。
「それが魔獣王、ディア様なのです」
その名を聞いたアイリは、衝撃に目を見開いた。
アイリはエメラの真意にも気付き始めた。
魔獣を守れる強さと、結界を維持できる魔力を持つのは、希少種の『バードッグ』しかいない。
ディアを王に据えて『バードッグ』の子孫を残し、後継者へと繋げていく。
そのためにエメラは、ディアと結ばれたいのだと。
その次の瞬間、アイリの視界に広がった光景は……
「え?ここって……城下町?」
賑わう繁華街と、道ゆく人々。その一本道の先には王宮の城も見える。
ここはアイリが先ほどまで歩いていた、魔界の城下町のようだ。
という事は、単にワープしたのだろうか。
「ここは魔界ではありません。『魔獣界』ですわ」
「え?でも……」
「よくご覧下さい」
アイリはもう一度、街の様子を眺める。
見慣れた街並みなのだが、よく見ると魔界の城下町とは雰囲気が違う事に気付いた。
建物の材質や装飾、店の並びも違うし、行き交う人々も悪魔ではないようだ。
するとエメラが説明を始めた。
「魔界の城下町を参考にして作った街なので、似ているのは当然ですわ」
「じゃあ、ここは異世界なの?」
「正確には、魔界の森の中にある『街』ですわね」
エメラが言うに、魔界の森の中に、魔獣だけが暮らす街を作ったのだという。
住民は全て『人の姿に変身した魔獣』、つまり希少種のみ。
この街は結界で守られ、外界からは存在が隠されていて、出入りできるのは魔獣のみ。
「城下町程度の小規模な街ですが、ここまで数百年かかりましたわ」
「エメラさんが一人で魔獣界を治めていたの?」
「この街を守る結界を維持できる魔獣は『バードッグ』しかいませんから」
現状、エメラが魔獣界の女王のような存在となって治めていると言える。
エメラは、城下町の街並みの先に見える城を指差した。
「あのお城には、まだ王が存在しません」
アイリには、エメラが何を言おうとしているのか分からない。
しかし突然、エメラが淡々とした口調に変わった事で、強い胸騒ぎを感じた。
「この世界には王が必要なのです。そして、王の力を継ぐ後継者も……」
アイリは胸元のペンダントを両手でぎゅっと握りしめて顔を伏せた。
エメラの、その先の言葉を聞くのが怖い。
「それが魔獣王、ディア様なのです」
その名を聞いたアイリは、衝撃に目を見開いた。
アイリはエメラの真意にも気付き始めた。
魔獣を守れる強さと、結界を維持できる魔力を持つのは、希少種の『バードッグ』しかいない。
ディアを王に据えて『バードッグ』の子孫を残し、後継者へと繋げていく。
そのためにエメラは、ディアと結ばれたいのだと。