悪魔の王女と、魔獣の側近
時刻は深夜。
城内は静まり返っているが、その中に明かりの灯った大部屋がある。
そこは無数の本棚が果てしなく並ぶ、城の図書館。
深夜の図書館を独占し、読書用の机に一人で座っているのは、レイトだ。
机の上には辞書のように分厚い本が数冊積み重なっている。
黙々と読書を続けているレイトの正面に、足音もなく突然、何者かの影が近付いた。
レイトが顔を上げて、正面を見据える。
「王女……?」
レイトの机の前に立っていたのは、パジャマ姿のアイリだ。
イリアの存在を知らないレイトは、今の彼女をアイリだと思っている。
イリアは、レイトが手元で広げている本を覗き込みながら言う。
「こんな時間に何してんの?」
いつものアイリの口調と違う印象だが、レイトは気にせずに答える。
「何って、読書だよ。この図書館の本を読み尽くすチャンスだからね」
レイトは、コランの側近を務める1年間は、城に住み込みで働いている。
普段は入れない王宮の図書館の本を、1年かけて読み尽くすつもりなのだ。
それほどに読書好きで速読のレイトなら、本当に達成しそうに思える。
「ふ~ん。なら、知識量はすごいのね。じゃあ、頭のいいレイトくんに、質問」
「え?」
なんだか口調も雰囲気もアイリとは違うと気付き始めたレイトは、注意深くイリアを見る。
イリアの瞳の色は、月のような金色に輝いていた。
「悪魔と魔獣が結ばれて子を成す可能性って、ある?」
意図の読めない、イリアの唐突な質問。
おそらくそれは、アイリとディアの事を言っているのだろう。
レイトはイリアに警戒しながらも冷静に答えを返す。
「前例がないから、確かな事は言えないよ」
「何よ、分からないの?」
「だから、これは僕の考えだけど」
レイトは緑の瞳で、イリアの金色の瞳を真直ぐに見返して続ける。
「可能性はゼロじゃない。前例がないなら、自分が最初の例を作ればいい。それが可能性を示すんじゃないかな」
それを聞いたイリアは、満足したように満面の笑顔になる。
城内は静まり返っているが、その中に明かりの灯った大部屋がある。
そこは無数の本棚が果てしなく並ぶ、城の図書館。
深夜の図書館を独占し、読書用の机に一人で座っているのは、レイトだ。
机の上には辞書のように分厚い本が数冊積み重なっている。
黙々と読書を続けているレイトの正面に、足音もなく突然、何者かの影が近付いた。
レイトが顔を上げて、正面を見据える。
「王女……?」
レイトの机の前に立っていたのは、パジャマ姿のアイリだ。
イリアの存在を知らないレイトは、今の彼女をアイリだと思っている。
イリアは、レイトが手元で広げている本を覗き込みながら言う。
「こんな時間に何してんの?」
いつものアイリの口調と違う印象だが、レイトは気にせずに答える。
「何って、読書だよ。この図書館の本を読み尽くすチャンスだからね」
レイトは、コランの側近を務める1年間は、城に住み込みで働いている。
普段は入れない王宮の図書館の本を、1年かけて読み尽くすつもりなのだ。
それほどに読書好きで速読のレイトなら、本当に達成しそうに思える。
「ふ~ん。なら、知識量はすごいのね。じゃあ、頭のいいレイトくんに、質問」
「え?」
なんだか口調も雰囲気もアイリとは違うと気付き始めたレイトは、注意深くイリアを見る。
イリアの瞳の色は、月のような金色に輝いていた。
「悪魔と魔獣が結ばれて子を成す可能性って、ある?」
意図の読めない、イリアの唐突な質問。
おそらくそれは、アイリとディアの事を言っているのだろう。
レイトはイリアに警戒しながらも冷静に答えを返す。
「前例がないから、確かな事は言えないよ」
「何よ、分からないの?」
「だから、これは僕の考えだけど」
レイトは緑の瞳で、イリアの金色の瞳を真直ぐに見返して続ける。
「可能性はゼロじゃない。前例がないなら、自分が最初の例を作ればいい。それが可能性を示すんじゃないかな」
それを聞いたイリアは、満足したように満面の笑顔になる。