悪魔の王女と、魔獣の側近
それから部屋の明かりを消して、二人は同じベッド、同じ布団で並んで寝る。
静かになった暗闇の中で、しばらくすると真菜は気付いた。
……アイリが震えている事に。泣いているのだろう。
真菜は、震えるアイリを包み込むように抱きしめた。

「真菜ちゃん……ディア、帰ってくるかな……」
「アイリちゃん、大丈夫。大丈夫だから。絶対に帰ってくるよ」

それは根拠のない励ましではない。真菜には確信があって言っている。
今になって不安と悲しみに襲われたアイリは、流れる涙を止めることができない。

「エメラさんはディアと同じ魔獣だし、私よりも大人だし……勝てるかな……」

自分とエメラを比べてしまい、急に弱気な発言をするアイリ。
今、ここにイリアがいたら一喝していたに違いない。
そしてアイリが一番、恐れている不安を口にする。

「今ごろ、ディアは……エメラさんと夜を過ごして……」
「アイリちゃん!!」

アイリが言い終わる前に、真菜が声を上げて制止する。
真菜はアイリの両肩をグッと掴んで言い聞かせる。

「大丈夫。アイリちゃんのペンダントから、今もディア先生の強い愛を感じるから」
「……本当?」
「うん。私の能力を、ディア先生を信じて」

真菜の力強い言葉にアイリは頷く。
嘘でも偽りでもない。真菜には魔力を感じ取る能力がある。
ペンダントに込められた、ディアの愛という名の魔力を確かに感じ取っている。
そんな真菜が言うのだから、間違いない。
ディアを信じると言ったのに、信じられなくなっていたのは彼ではなく、自分自身。
強く、堂々と自信に満ち溢れたイリアを、今は羨ましく思う。

……今夜だけは、思いっきり泣こう。
……そうしたら、明日からは前を向こう。

アイリは心に誓って、真菜と共に静かな夜を過ごした。
< 68 / 90 >

この作品をシェア

pagetop