悪魔の王女と、魔獣の側近
コランは自信満々で自分の提案を語り続ける。

「今の魔獣界は魔界の一部だけど、いずれ独立したいはずだろ?それには、全ての世界の承認が必要だ」

新たな独立世界として正式に認められるには、条件がある。
魔界、天界、死神界など、全ての異世界の王から承認を得る必要があるのだ。
そして代理であっても、今の魔界の王はコランだ。
エメラは、コランが魔王である期間中に承認を得ようとするだろう。
何故なら、エメラは魔王オランを憎んでいるし、王子コランの方が扱いやすいからだ。
魔獣界の運命をコランが握っていると言っても過言ではない。
これを武器にするのだ。

「だから、魔獣界はオレからの招待や接待は絶対に断れない。そうだろ?」

そう。魔獣界は独立するまで、決してコランの機嫌を損ねるような事はできない。

「まぁ、それでもオレは絶対に承認しないけどな!ふっふっ」

あの無邪気で子供っぽいコランが、まるで策士のように見えてくる口ぶりだ。
あまりに完璧なコランの策に驚いた3人は、感嘆の声を上げる。

「お兄ちゃん、すごい……さすが……」
「王子……どうしたの?まさか王子まで別人格なの?」
「コランくん、ちょっと怖い……」

アイリ以外は褒めていない。
そんなアイリは、コランに作戦の続きを催促する。

「それで?ディアをお城に招待して、それから、どうするの?」

ここからが一番肝心なところだ。
ディアの記憶を取り戻す方法。その考えが、コランにはあるのだろうか。

「その後は、アレだ!アイリの『えろ仕掛け』でディアの記憶を……」
「色仕掛けでしょ。いや色仕掛けも、どうかと思うよ」

あながち間違いでもないコランのボケに対し、レイトは脱力してツッコミを入れる。
コランとしてはボケでもなんでもなく大真面目なのだが、真菜もズッコケた。
しかし何故か、アイリだけは感心して真剣に考えだした。

「色仕掛け……うん、色仕掛けかぁ……いいかも」
「えぇ!?アイリちゃん、やる気満々!?」

さすがに驚いた真菜がツッコんだ。
アイリは見た目は少女だが、スタイルは抜群なので効果は期待できる……かもしれない。
アイリは独り言のようにブツブツと呟いている。

「ディアに記憶がなくても、体が覚えてるかも……体は正直……」
「ねぇ、ちょっとアイリちゃん!?大丈夫!?今、すっごく恥ずかしいこと言ってるよ!?」

聞いてる真菜の方が恥ずかしくなって顔を真っ赤にしている。
そこで、冷静なレイトがコランに確認して作戦を煮詰めていく。

「それで、ディア先生を招待する名目はどうするの?」
「うーん……城でパーティーとか、どうだ?」
「急に意味なくパーティー開くのは不自然だよ」
「じゃあ、オレの誕生日パーティーでいいか!うん、それだ!決まり!」

今まで一度もコランの誕生日パーティーなど開いた事はないのだが……。
まぁ、代理魔王の権限で、今年はアリだろう。
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