悪魔の王女と、魔獣の側近
アイリはディアと共に執務室に入る。
すると、魔王専用の机にはコランが座っていた。
代理とはいえ、今日から1年間はコランが魔王なのだ。
コランの席の横では、側近の少年が付き添っている。
アイリは、その少年を見た瞬間に驚いて声を上げた。
「お兄ちゃんの側近って、レイトくんなの!?」
その声に反応して、レイトと呼ばれた少年がアイリの方を向いた。
「あぁ、王女。おはよう。そう、僕が今日から王子の側近だよ。よろしくね」
レイトは悪魔特有の褐色肌に黒髪、緑色の瞳。
クールで知的で成績優秀な、純血の悪魔だ。
見た目は高校生ほどだが、その落ち着きから大人っぽさを感じる。
アイリ、コラン、真菜、レイトの4人は元・同級生であり、仲良しメンバー。
レイトは真菜と同じく、未来の魔王、つまりコランの側近を目指している。
絶好の機会という事で今回、魔王がレイトをコランの側近に任命した。
レイトがコランの手元を見て、突然叫んだ。
「王子!!そこ違う!!印を押す場所は、ここと、ここ!!朱肉は赤色!!」
「え~?こんなの適当でいいじゃん!レイトは細かいなぁ」
「王子が荒すぎるんだよ!このあと会議だから、あと5分で終わらせて」
「少し落ち着こうぜ、レイト!」
「王子に合わせてたら仕事が終わらないよ」
学生の頃から変わらない二人のノリは、仮にも魔王と側近には見えない。
レイトは早くも、有能な側近ぶりを発揮していた。
そんな二人を遠目で見ているアイリは、感心しながら自分も気合を入れる。
(お兄ちゃん、大変そう……私に手伝える仕事、ないかな)
どちらかと言えば、大変なのは側近のレイトだ。
アイリは机の上の報告書を数枚、手に取って確認する。
「うーんと……野生の魔獣による、負傷被害の報告……」
アイリが読み上げていると、ディアが隣に立って、それを覗き込む。
「近頃、野生の魔獣が凶暴化しつつあるように感じます。人を襲うとは妙ですね」
ディア自身も、かつては凶暴な野生の魔獣であっただけに、思うところがあるようだ。
『最強の魔獣』であるディアに、『人の姿』と居場所を与えたのは、魔王オランなのだ。
しかし、いくら魔界の住民の治安が良くて平和でも、魔獣が問題になるとは盲点だった。
「そうだね、これは何とかしなくちゃ。原因を調べないと……」
「アイリ様。魔獣のことでしたら、私にお任せ下さい。周辺の森を視察して参ります」
「一人で行くの?危険だよ」
「大丈夫です。私は魔獣ですから」
普段は人の姿をしていても、ディアの実態は『最強の魔獣』。
確かに、これ以上の適任者はいない。
だが……これが、二人にとって『過酷な試練』の始まりでもあった。
すると、魔王専用の机にはコランが座っていた。
代理とはいえ、今日から1年間はコランが魔王なのだ。
コランの席の横では、側近の少年が付き添っている。
アイリは、その少年を見た瞬間に驚いて声を上げた。
「お兄ちゃんの側近って、レイトくんなの!?」
その声に反応して、レイトと呼ばれた少年がアイリの方を向いた。
「あぁ、王女。おはよう。そう、僕が今日から王子の側近だよ。よろしくね」
レイトは悪魔特有の褐色肌に黒髪、緑色の瞳。
クールで知的で成績優秀な、純血の悪魔だ。
見た目は高校生ほどだが、その落ち着きから大人っぽさを感じる。
アイリ、コラン、真菜、レイトの4人は元・同級生であり、仲良しメンバー。
レイトは真菜と同じく、未来の魔王、つまりコランの側近を目指している。
絶好の機会という事で今回、魔王がレイトをコランの側近に任命した。
レイトがコランの手元を見て、突然叫んだ。
「王子!!そこ違う!!印を押す場所は、ここと、ここ!!朱肉は赤色!!」
「え~?こんなの適当でいいじゃん!レイトは細かいなぁ」
「王子が荒すぎるんだよ!このあと会議だから、あと5分で終わらせて」
「少し落ち着こうぜ、レイト!」
「王子に合わせてたら仕事が終わらないよ」
学生の頃から変わらない二人のノリは、仮にも魔王と側近には見えない。
レイトは早くも、有能な側近ぶりを発揮していた。
そんな二人を遠目で見ているアイリは、感心しながら自分も気合を入れる。
(お兄ちゃん、大変そう……私に手伝える仕事、ないかな)
どちらかと言えば、大変なのは側近のレイトだ。
アイリは机の上の報告書を数枚、手に取って確認する。
「うーんと……野生の魔獣による、負傷被害の報告……」
アイリが読み上げていると、ディアが隣に立って、それを覗き込む。
「近頃、野生の魔獣が凶暴化しつつあるように感じます。人を襲うとは妙ですね」
ディア自身も、かつては凶暴な野生の魔獣であっただけに、思うところがあるようだ。
『最強の魔獣』であるディアに、『人の姿』と居場所を与えたのは、魔王オランなのだ。
しかし、いくら魔界の住民の治安が良くて平和でも、魔獣が問題になるとは盲点だった。
「そうだね、これは何とかしなくちゃ。原因を調べないと……」
「アイリ様。魔獣のことでしたら、私にお任せ下さい。周辺の森を視察して参ります」
「一人で行くの?危険だよ」
「大丈夫です。私は魔獣ですから」
普段は人の姿をしていても、ディアの実態は『最強の魔獣』。
確かに、これ以上の適任者はいない。
だが……これが、二人にとって『過酷な試練』の始まりでもあった。