束の間のブルーモーメント
わたしのすきなひと
わたしにはともだちがいない。
小さいころはたくさんいたけど、学年があがるごとに、みんなが興味のある話題についていけなくなった。
一番苦手だったのは、人をうらやんだり、ねたんだり、八つ当たりみたいな悪口を吐いたりすること。
その三つで、つながりを深める空気感。
苦手でたまらなかった。
わたしにも汚れた気持ちはたくさんある。
だけど、それを他の誰かと一緒に楽しみたいとは思えない。
話している時は気づかないふりをしているけど、ひとりになったら胸の奥がズキズキと痛むからだ。
ファッションには興味がない。
はやりの音楽だって知らない。
すきなのは空の動きや、街の匂い。
わたしのとなりを吹き抜けていく風。
毎朝、季節を追いかけて夜はささやかな夢をみる。
わたしは本当につまらない性格だ。
こんな退くつなやつと一緒にすごしたいなんて誰が思うんだろう。
誰もいない。
誰もいなかった。
彼と出会うまでは。