失くしたあなたの物語、ここにあります
第四話 『無色の終夜』を君へ
「秋祭りの会合?」
「毎年10月に、城下町で提灯祭りがあるんだよ。その説明会があったんだ」
毎週火曜日は城下町の定休日。
火曜日の今日は、城下町に出店する店主らを対象とした商工会の集まりがあり、会合が終わるとその足で、天草さんは沙代子の自宅を訪ねてきていた。
どうやら、会合の内容は秋祭りに関するものだったようだ。
「たしか、秋祭りって収穫感謝祭だよね」
「よく知ってるね。鶴川城下に無数の提灯が並んでさ、メインストリートにはたくさん夜店が出るから、なかなか荘厳なんだけど、楽しいお祭りだよ」
「あ、うん。提灯のお祭りはたぶん知ってる」
天草さんに言われるまでは忘れていたけれど、沙代子も両親と一緒にお祭りに出かけた記憶がある。柔らかな光を灯す提灯が浮かぶ空を見上げた高揚感は今でも覚えている。
「あ、そっか。小学生の頃に行ったことあるんだね。じゃあ、話は早いかな。今年も出店しようと思ってさ」
「去年も出したの?」
「商工会の会長さんに誘っていただいたから出店したよ。去年はハーブティーだけ出したんだけどさ、今年は洋菓子も出せたらいいなって思ってるんだ」
わざわざ、天草さんが訪ねてきたのはそういうことか、と沙代子は気づく。
「お祭りは土日だよね? おばさんは農園の仕事で忙しいかもしれないから、私でよければ、手伝うよ」
「葵さんならそう言ってくれると思った。来週末には出店計画書を出さなきゃいけなくてさ、葵さんにも資料渡しておくよ」
「毎年10月に、城下町で提灯祭りがあるんだよ。その説明会があったんだ」
毎週火曜日は城下町の定休日。
火曜日の今日は、城下町に出店する店主らを対象とした商工会の集まりがあり、会合が終わるとその足で、天草さんは沙代子の自宅を訪ねてきていた。
どうやら、会合の内容は秋祭りに関するものだったようだ。
「たしか、秋祭りって収穫感謝祭だよね」
「よく知ってるね。鶴川城下に無数の提灯が並んでさ、メインストリートにはたくさん夜店が出るから、なかなか荘厳なんだけど、楽しいお祭りだよ」
「あ、うん。提灯のお祭りはたぶん知ってる」
天草さんに言われるまでは忘れていたけれど、沙代子も両親と一緒にお祭りに出かけた記憶がある。柔らかな光を灯す提灯が浮かぶ空を見上げた高揚感は今でも覚えている。
「あ、そっか。小学生の頃に行ったことあるんだね。じゃあ、話は早いかな。今年も出店しようと思ってさ」
「去年も出したの?」
「商工会の会長さんに誘っていただいたから出店したよ。去年はハーブティーだけ出したんだけどさ、今年は洋菓子も出せたらいいなって思ってるんだ」
わざわざ、天草さんが訪ねてきたのはそういうことか、と沙代子は気づく。
「お祭りは土日だよね? おばさんは農園の仕事で忙しいかもしれないから、私でよければ、手伝うよ」
「葵さんならそう言ってくれると思った。来週末には出店計画書を出さなきゃいけなくてさ、葵さんにも資料渡しておくよ」