失くしたあなたの物語、ここにあります
「姉さんの大嫌いなやつがいるのに、戻ってくるなんて変だよ」
沙代子の行動を不可解に感じているみたいだが、やはり彼は淡々としている。
「……悠馬」
「姉さんの、は違うか。俺も嫌いだし」
「そんなこと言いに来たの? 天草さんもいらっしゃるし、とにかく中に入って」
心配そうにする天草さんに気づいて、沙代子はあわてて玄関扉を開く。
「天草さん、ごめんなさい。秋祭りの話はまた」
「あ、うん。困ったことがあれば、言って」
「すみません。名刺いただけますか?」
唐突に、悠馬が天草さんにそう言う。
「え、俺の? いいよ。待って」
天草さんは驚いたようだが、すぐにトートバッグを開くと、カードケースから名刺を取り出す。
「まろう堂っていうカフェをやってます。しばらくこっちにいるなら、寄ってもらえるとうれしいな」
「古本、扱ってるんですね」
天草さんの言葉を聞いているのかいないのか……、いや、悠馬のことだから、しっかり聞いているんだろうけど、名刺を確認すると、彼は無感情につぶやく。
「葵さんの……っていうか、悠馬くんのお父さんの古本を預かって販売してるんだよ。まろう堂は城下町の東通りの入り口にあるから、よかったら来てください」
「はい。行かせてもらいます」
悠馬は礼儀正しく頭を下げると、さっさと開いた扉の奥へと進み入る。
「天草さん、本当にごめんなさい。じゃあ、また」
沙代子はそう言い置いて、彼からの返事を待つことなく、悠馬を追いかけた。
沙代子の行動を不可解に感じているみたいだが、やはり彼は淡々としている。
「……悠馬」
「姉さんの、は違うか。俺も嫌いだし」
「そんなこと言いに来たの? 天草さんもいらっしゃるし、とにかく中に入って」
心配そうにする天草さんに気づいて、沙代子はあわてて玄関扉を開く。
「天草さん、ごめんなさい。秋祭りの話はまた」
「あ、うん。困ったことがあれば、言って」
「すみません。名刺いただけますか?」
唐突に、悠馬が天草さんにそう言う。
「え、俺の? いいよ。待って」
天草さんは驚いたようだが、すぐにトートバッグを開くと、カードケースから名刺を取り出す。
「まろう堂っていうカフェをやってます。しばらくこっちにいるなら、寄ってもらえるとうれしいな」
「古本、扱ってるんですね」
天草さんの言葉を聞いているのかいないのか……、いや、悠馬のことだから、しっかり聞いているんだろうけど、名刺を確認すると、彼は無感情につぶやく。
「葵さんの……っていうか、悠馬くんのお父さんの古本を預かって販売してるんだよ。まろう堂は城下町の東通りの入り口にあるから、よかったら来てください」
「はい。行かせてもらいます」
悠馬は礼儀正しく頭を下げると、さっさと開いた扉の奥へと進み入る。
「天草さん、本当にごめんなさい。じゃあ、また」
沙代子はそう言い置いて、彼からの返事を待つことなく、悠馬を追いかけた。