失くしたあなたの物語、ここにあります
第五話 美味しいハーブティーの作り方
閉店間際のまろう堂を訪ねると、天草さんはカウンターでハーブティーを淹れているところだった。
新店舗で出す予定のケーキを焼いたから味見してほしい、と連絡を入れた沙代子が訪れる時間を見計らって淹れてくれていたのだろう。
客のいない店内を進み、カウンター席に腰かける。「いらっしゃい」と優しく微笑む彼が、薄茶色のハーブティーを差し出してくる。カモミールティーのようだ。
ありがとう、と沙代子はひと口飲み、ほっと安堵の息を吐く。彼の淹れるハーブティーは魔法がかかっているようだ。疲れも悩みも全部、忘れさせてくれるような魔法が。
「天草さん、タルトは好き?」
早速、沙代子は本題を切り出した。
「あんまり好き嫌いはない方だと思うよ。ケーキって、タルトなんだ?」
「うん。いろいろ悩んで、タルトのお店を開くことにしたの。それでね、今日は野菜とフルーツのタルトを焼いてみたから、よかったら、食べてみて」
そう言って、沙代子はカウンターの上へケーキ箱を差し出す。
「へえ、タルト専門店かぁ。野菜を使ったタルトは食べたことないかなー。これは、トマトとブルーベリー?」
ケーキ箱の中をのぞき込む天草さんは、おいしそうだね、と穏やかな笑みを浮かべてそう言う。
「甘味の強いトマトを使ってるから、苦手な方でも大丈夫じゃないかなって思ってるんだけど」
「俺はトマト好きだからなぁ。参考になるかわからないけど、食べてみるよ」
「本当? よかった」
「扱うのは、野菜のタルトのみ?」
真っ白なプレートにタルトを乗せながら、彼は尋ねてくる。
「野菜が苦手な方のために、野菜のタルトとは別に、季節のフルーツを使ったタルトと両方扱うつもり」
「大人はベジスイーツでも、お子さんはフルーツがいいかもしれないし、その選択はいいと思う。お店はまほろば書房の跡地に?」
新店舗で出す予定のケーキを焼いたから味見してほしい、と連絡を入れた沙代子が訪れる時間を見計らって淹れてくれていたのだろう。
客のいない店内を進み、カウンター席に腰かける。「いらっしゃい」と優しく微笑む彼が、薄茶色のハーブティーを差し出してくる。カモミールティーのようだ。
ありがとう、と沙代子はひと口飲み、ほっと安堵の息を吐く。彼の淹れるハーブティーは魔法がかかっているようだ。疲れも悩みも全部、忘れさせてくれるような魔法が。
「天草さん、タルトは好き?」
早速、沙代子は本題を切り出した。
「あんまり好き嫌いはない方だと思うよ。ケーキって、タルトなんだ?」
「うん。いろいろ悩んで、タルトのお店を開くことにしたの。それでね、今日は野菜とフルーツのタルトを焼いてみたから、よかったら、食べてみて」
そう言って、沙代子はカウンターの上へケーキ箱を差し出す。
「へえ、タルト専門店かぁ。野菜を使ったタルトは食べたことないかなー。これは、トマトとブルーベリー?」
ケーキ箱の中をのぞき込む天草さんは、おいしそうだね、と穏やかな笑みを浮かべてそう言う。
「甘味の強いトマトを使ってるから、苦手な方でも大丈夫じゃないかなって思ってるんだけど」
「俺はトマト好きだからなぁ。参考になるかわからないけど、食べてみるよ」
「本当? よかった」
「扱うのは、野菜のタルトのみ?」
真っ白なプレートにタルトを乗せながら、彼は尋ねてくる。
「野菜が苦手な方のために、野菜のタルトとは別に、季節のフルーツを使ったタルトと両方扱うつもり」
「大人はベジスイーツでも、お子さんはフルーツがいいかもしれないし、その選択はいいと思う。お店はまほろば書房の跡地に?」