失くしたあなたの物語、ここにあります
*
『菜七子さんがいらしてるよ』
天草さんからメールをもらったのは、六坂神社でおまいりをしてから数日後のお昼過ぎだった。
天草さんの鋭い勘があたったのか、六坂の神様が願いを叶えてくれたのか、どちらにしても、沙代子は嬉々としてまろう堂に駆けつけた。
菜七子さんはカウンター席に腰掛けていた。彼女の目の前には、猫柄の封筒がある。天草さんが渡してくれたのだろう。
「菜七子さん、お久しぶりです」
声をかけると、封筒をじっと見つめていた彼女は視線をあげて、こちらへ顔を向けた。
「あっ、こんにちは。先日は失礼しました。お会いしたかったんです」
「私に?」
「カフェで居合わせた方に高校時代の話しちゃったって翔に話したら、迷惑だったんじゃない? って笑われて、謝ろうと思ってたんです」
彼女は照れくさそうに笑むと、カウンターチェアーからわざわざ降りて、丁寧に頭を下げた。
「全然、迷惑なんかじゃ。それで来てくれたの?」
「実は、友だちと待ち合わせしてたんですけど……」
戸惑うように言う菜七子さんと隣り合わせに座り、沙代子は尋ねる。
「お友だちって?」
「覚えてます? 高校時代の親友の睦子です。こっちに帰ってきてるから会いたいって急に連絡があったんです。ハーブティーのお店に興味があるっていうから、ここのお店で待ち合わせすることにしたんですけど」
「来ないの?」
「もう1時間待ってるんです。連絡入れても返事がないし。でも睦子、今までも急に連絡来なくなることあったから」
「何か急用ができたのかも」
『菜七子さんがいらしてるよ』
天草さんからメールをもらったのは、六坂神社でおまいりをしてから数日後のお昼過ぎだった。
天草さんの鋭い勘があたったのか、六坂の神様が願いを叶えてくれたのか、どちらにしても、沙代子は嬉々としてまろう堂に駆けつけた。
菜七子さんはカウンター席に腰掛けていた。彼女の目の前には、猫柄の封筒がある。天草さんが渡してくれたのだろう。
「菜七子さん、お久しぶりです」
声をかけると、封筒をじっと見つめていた彼女は視線をあげて、こちらへ顔を向けた。
「あっ、こんにちは。先日は失礼しました。お会いしたかったんです」
「私に?」
「カフェで居合わせた方に高校時代の話しちゃったって翔に話したら、迷惑だったんじゃない? って笑われて、謝ろうと思ってたんです」
彼女は照れくさそうに笑むと、カウンターチェアーからわざわざ降りて、丁寧に頭を下げた。
「全然、迷惑なんかじゃ。それで来てくれたの?」
「実は、友だちと待ち合わせしてたんですけど……」
戸惑うように言う菜七子さんと隣り合わせに座り、沙代子は尋ねる。
「お友だちって?」
「覚えてます? 高校時代の親友の睦子です。こっちに帰ってきてるから会いたいって急に連絡があったんです。ハーブティーのお店に興味があるっていうから、ここのお店で待ち合わせすることにしたんですけど」
「来ないの?」
「もう1時間待ってるんです。連絡入れても返事がないし。でも睦子、今までも急に連絡来なくなることあったから」
「何か急用ができたのかも」