失くしたあなたの物語、ここにあります
 そうして、落ちこぼれ魔女の親友は具体性を増し、京子がコーヒーを飲み終える頃には、しっかりとしたキャラクターに出来上がっていた。

「すごく理想的な女の子」
「ちょっと出来過ぎなぐらいだね」
「ううん、そんなことない。先生には上出来すぎるの?」
「いや、理想ではあるよ。思慮深くて正義感があって、その上、心優しくて、絶対に魔女を裏切らない。完璧だよ」
「私、自分に娘がいたら、こんな子だったらいいなって思うわ」
「君はまだ若いじゃないか。結婚願望あるの?」
「ありますよ、全然。だから、銀先生とだってこうして会ってるんですよ?」
「それはどういう意味かな?」

 水無月先生はおかしそうに笑った。先生は女心に鈍感で、京子ですらもやもやしてしまうほどだった。

「あんまり笑わないで。まじめに言ってるんですよ。私、銀先生が好きなんです。もう何度もこうして会ってるのに、先生はちっとも言ってくれないから」
「私と付き合いたいのか?」

 水無月先生は驚いたようにそう言った。

「さっきからそう言ってます」

 はじらうように言う彼女はきっととても魅力的だっただろう。先生は考え込んでいたのか、沈黙したが、程なくしてとても優しい声音で言った。

「惚れたのは、きっと私の方が先だ」
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