【書籍化】魔獣の王女はクールな悪魔と番いたい
第1話『結婚の条件』
ここは、悪魔が生きる世界、『魔界』。
悪魔にはコウモリのような黒い羽根があるが、普段は魔法で隠している。
そして魔界には『魔獣』という生物も生息している。
人間界との違いはそのくらいで、日常は変わらない。
そしてここは、魔界の学校『オラン学園』の校庭。その名の通り、魔王『オラン』が設立した学校である。
高校の制服である紺のブレザーを纏った少女が、桜吹雪が舞う校庭の真ん中で空を仰ぐ。白い肌に、栗色のボブヘア。神秘的な金色の瞳は、彼女が『人の姿をした魔獣』である証。
彼女の名は『イリア』。父は魔獣界の王、母は魔王の娘。イリアは魔獣でもあり悪魔でもある。そして魔獣界の王女であり、魔王の孫という、二つの世界のお姫様なのだ。
イリアは今日、魔界の学校の高等部を卒業した。
そんな彼女の後ろで、温かい眼差しで見守る二十歳くらいの若い青年がいた。黒髪に褐色肌、灰色のスーツを身に纏ったクールな彼は、純血の悪魔『レイト』だ。
「イリア、卒業おめでとう」
「あら、レイトせんせ。ありがと」
レイトは、この学校で『魔法』の授業を担当する教師として働いていた。イリアの卒業を見届けた後は、魔王の城で働くつもりだ。
「今日で僕はもう先生じゃなくなるよ」
「そうね。ウフフ、これからは堂々と愛してあげる」
「堂々って……今まで全然隠してなかったよね」
生徒と教師の関係は禁断の恋と言えるが、強気で大胆で押しの強いイリアは校内でも隠す事なくレイトに抱きついたりしていた。
レイトの困り顔を見るのを楽しんでいたイリアは、常にサディスティックな女王様でもある。そして校内の誰もが二人の仲を公認、黙認していたのも事実。
レイトは、イリアの高校卒業の日に果たすと決めていた事がある。
スーツの内ポケットに忍ばせた小さな宝石箱が、レイトの手によって取り出される。
「イリア。大事な話があるんだ」
「あら、何よ」
この決意をレイトが告げる時、それは新たな『約束』を意味する。
その手で、愛という名の魔力を込めた『婚約ペンダント』を捧げ、レイトは誓う。
「僕はイリアを愛してる。そして、これからも永遠に愛すると誓う」
見開かれたイリアの金色の瞳に映し出されたのは、レイトの瞳と同じ緑色の宝石が煌めくペンダント。
魔界のプロポーズでは、指輪やペンダントなどの装飾品の宝石に自らの魔力を込めて相手に贈る。
「結婚しよう」
二人を祝福するかのように舞う桜の花びらの中、高校卒業の日の校庭で。浮かび上がった二人の影が寄り添い、一つに重なり合う。
「当然よ」
堂々と自信に満ちた笑顔で返したイリアの胸元には、約束の証のペンダントが光り輝いていた。
悪魔にはコウモリのような黒い羽根があるが、普段は魔法で隠している。
そして魔界には『魔獣』という生物も生息している。
人間界との違いはそのくらいで、日常は変わらない。
そしてここは、魔界の学校『オラン学園』の校庭。その名の通り、魔王『オラン』が設立した学校である。
高校の制服である紺のブレザーを纏った少女が、桜吹雪が舞う校庭の真ん中で空を仰ぐ。白い肌に、栗色のボブヘア。神秘的な金色の瞳は、彼女が『人の姿をした魔獣』である証。
彼女の名は『イリア』。父は魔獣界の王、母は魔王の娘。イリアは魔獣でもあり悪魔でもある。そして魔獣界の王女であり、魔王の孫という、二つの世界のお姫様なのだ。
イリアは今日、魔界の学校の高等部を卒業した。
そんな彼女の後ろで、温かい眼差しで見守る二十歳くらいの若い青年がいた。黒髪に褐色肌、灰色のスーツを身に纏ったクールな彼は、純血の悪魔『レイト』だ。
「イリア、卒業おめでとう」
「あら、レイトせんせ。ありがと」
レイトは、この学校で『魔法』の授業を担当する教師として働いていた。イリアの卒業を見届けた後は、魔王の城で働くつもりだ。
「今日で僕はもう先生じゃなくなるよ」
「そうね。ウフフ、これからは堂々と愛してあげる」
「堂々って……今まで全然隠してなかったよね」
生徒と教師の関係は禁断の恋と言えるが、強気で大胆で押しの強いイリアは校内でも隠す事なくレイトに抱きついたりしていた。
レイトの困り顔を見るのを楽しんでいたイリアは、常にサディスティックな女王様でもある。そして校内の誰もが二人の仲を公認、黙認していたのも事実。
レイトは、イリアの高校卒業の日に果たすと決めていた事がある。
スーツの内ポケットに忍ばせた小さな宝石箱が、レイトの手によって取り出される。
「イリア。大事な話があるんだ」
「あら、何よ」
この決意をレイトが告げる時、それは新たな『約束』を意味する。
その手で、愛という名の魔力を込めた『婚約ペンダント』を捧げ、レイトは誓う。
「僕はイリアを愛してる。そして、これからも永遠に愛すると誓う」
見開かれたイリアの金色の瞳に映し出されたのは、レイトの瞳と同じ緑色の宝石が煌めくペンダント。
魔界のプロポーズでは、指輪やペンダントなどの装飾品の宝石に自らの魔力を込めて相手に贈る。
「結婚しよう」
二人を祝福するかのように舞う桜の花びらの中、高校卒業の日の校庭で。浮かび上がった二人の影が寄り添い、一つに重なり合う。
「当然よ」
堂々と自信に満ちた笑顔で返したイリアの胸元には、約束の証のペンダントが光り輝いていた。